苦い文学

多様性の社会

「これからの私たちの社会は多様性を認め合うことが必要です」と先生は僕たちの前で語られた。

「そうした社会をつくるためには、今このクラスにいるみなさんもまた、多様性を認め合うことが必要です」

僕たちは黙って聞いていた。

「たとえば、同性愛という方々がおられます。男性なのに男性を愛したり、女性なのに女性を愛する人々です。私たちはこうした人々も受け入れてあげなくてはなりません」

ここで先生は急に笑った。

「いや、受け入れてあげる、というのはおかしな言葉でしたね。なぜなら、この教室にもそうした方々がいらっしゃるにちがいないからです」

僕たちは互いに顔をチラチラうかがった。

「ある統計によれば、100人に3人はLGBTQだそうです。ということは、この50人のクラスに最低1人はいるという計算ですね」

クラスはざわつきだした。

「そういう人がいても意地悪や差別はいけませんよ。同じクラスメイトなのですから。では、聞きましょうか。LGBTQの方はどうぞ手を上げてください!」

誰も手を上げなかった。先生は不機嫌になられた。先生によれば、これは僕たちのクラスで差別が横行している決定的証拠なのだ。だから、かわいそうなLGBTQが手を上げられないのだ。

「そういう差別的な生徒たちは先生がきつく懲らしめてやりますから、心配しないでください。もう一度聞きますよ。LGBTQは手を上げて!」

今度はみんな手を上げた。先生はもう顔を真っ赤にして、前列の生徒たちをひとりひとり殴りはじめた。

「おまえか! おまえか! LGBTQは!」

先生は気がすむまで僕たちを殴ると、「今日中にLGBTQをひとり見つけ出さないと、もっとひどい目に会いますよ!」と言い捨てて教室を飛び出していった。

僕たちは話し合いの結果、自分のスマートフォンにもっともたくさんクイーンの曲が入っていた生徒を、先生に引き渡すことにした。