苦い文学

完全に正しい歴史教科書

私は歴史家でもなく、また教育家でもないが、ひとりの愛国者として、どのような歴史教科書が正しいかはわかる。

正しい教科書とは国を愛する心を育むものでなくてはならない。ゆえに、嘘の歴史はもちろんのこと、自虐史観にもとづく歴史はすべて排除されていなくてはならない。

こうした思想に基づき、ついに完全に正しい歴史教科書が完成した。われわれ愛国者の頭にあるものすべてが注ぎ込まれた究極の歴史教科書だ。

まずわれわれの教科書を手にとってほしい。大きさはどうだ。持ち運びに便利なコンパクトサイズだ。

小脇に抱えて、さっそうと歩いてみよう。学生気分満点だ。机の上に置いてみよう。その高級感、もう教科書検定一発合格の風格だ。

では、ぱっと開いてほしい。たちまち授業中の雰囲気が漂う。もちろん、電車の中で開けば、テスト勉強にいそしんでいるように見えること請け合いだ。赤い線を引いたり、暗記用の赤い下敷きを当てたりして、大いに楽しもう。

そればかりではない! あなたが怠け者の生徒ならばパラパラ漫画だって描ける。いや、あなたが厳しい教師ならば、その怠け者の生徒の頭をこの教科書で叩くことだってできる。

教科書としてじつに正しく仕上がった。もう中身など必要ないではないか。