苦い文学

未来における記憶

はるか遠い未来に飛ばされた私は、自分の時代に帰る方法を探してさまよっていた。

冷たい山岳地帯を下る薄暗い小径を歩いていると、やがて日が差し、目の前にスタジアムのような空間が広がった。

そこには数えきれない人々がおり、どの人も苦悶の表情をあらわにしていた。ある者は自分の頬を叩き、またある者はこめかみを殴っていた。また別の人間は頭を抱え、あるいは赤面し、あるいは身を捩りながら嘆いていた。

あまりの悲惨な光景に私はおぞけだち、たまたま近くを歩いていた男に、これはいったいなんなのかと、尋ねた。

白いローブをまとったその男は落ち着いた声で語った。

「永遠の命もときとして不幸をもたらすということだ。旅のおかたよ」

「未来では不老不死が実現してるということですか!」

「さよう。どうやら、過去からおいでになったようですな」

私はうなずき、名を名乗り、自分が未来にやってきた事情を語った。

「なるほど、ならば、この光景を見て驚かれていたのも無理もないでしょう。これらの人々は、過去になした恥ずかしい思い出のためにこのような責め苦に苛まれているのだ」

「といいますと」

「かりに年に数回、赤面すべき失敗や思い違い、失態、失笑ものの出来事に直面するとすると、どうだろうか。これらの人々は少なくとも10万年以上は生きているのだから、恥ずかしい記憶の数たるや、おお、それは1分に1つ思い出したとしても、1年では足りないほどなのだ」

「すると、これらの人々は残りの永遠の人生を『なんであんなことしてしまったのだ〜!』と恥入り悶えつつ生きていかねばならないということなのですね」

「さよう」

「ですが、あなたはいかがでしょうか。あなたもやはり不老不死なのでは?」

彼は笑って私の懸念を打ち消した。

「私は恥ずかしい記憶が生じた場合、直ちに消去されるシステムを導入しているのだ。そればかりではない。不快なものに出会うたびに、それらの記憶は一切の痕跡を残すことなく、忘却の彼方に連れ去られるのだ」

私が未来の生活に感心していると、彼は不意に尋ねてきた。

「ところであなたは誰でしょうか。初めてお会いするようですが。用がなければ失礼」

そう言って立ち去る彼を見ながら、私は、彼のシステムの容赦なさにただ赤面するばかりであった。