オスティア・アンティカ(Ostia Antica)で出土した五神像(「イカリイェヌス」「カトゥッルス」「ブー」「ナクヮモードゥス」「シムロー」)について、興味深い伝説を伝えてくれるのが、ペトロニウスの『サテュリコン』8巻の断片である。
この古代の小説に残された断片からは、五神像は「シムロー」の代わりにもともとは「アライース」という神であったことが知れる。というのもこんな伝説が記録されているからだ。
……あるとき、主神イカリイェヌスは神々の序列を決めるために、全員集合を呼びかけた。そこで、シムローが使いに出された。なぜなら(その頃は)使い走りをしていたからである。(シムローは)行って、カトゥッルス、ブー、ナクヮモードゥスに告げた。「彼(イカリイェヌス)が呼んでいる。神々の序列を決めるために」 (シムローは)最後の神(アライース)のもとにやってくると、巨大な(原文欠)をその家の前に置いた。「彼(イカリイェヌス)からの贈り物です」 アライースは(それを)持ち上げて家に入れようとしたが、巨大さゆえに入らなかった。(アライースが)家に入れようと手間取っている間に彼(シムロー)はイカリイェヌスのもとに駆け戻った……
「シムロー」が計略によって「アライース」の地位を奪ったというこの伝承からは、この神のトリックスター的な一面をうかがうことができよう。
さて、この「アライース」は怒りの神とされ、しばしば stylus を掲げた男性としても描かれる。stylus とは古代世界のペンのことである。