「ショウヨウとは?」と怪訝な顔つきの帝王に向かって賢者デリヘルスは次のように語ったのであった。
「平たくいえば散歩でございます。アリステレスが言うには、一番のダイエット法は散歩にほかならないということで、それゆえ、アリストテレスのダイエット法にしたがうものは逍遥学派と呼ばれております」
「散歩か……それもちと大変ではないかの。もっと余にふさわしいダイエット法はないものか」
と帝王が不満げにいうやいなや、「ダイエットに王道なし!」と厳しく一喝したのがデリヘルス。そして再び穏やかな口調に戻るとこう続けたのであった。
「こうアリストテレスはかのアレクサンドロス大王に言ってのけたということでございます」
「なに、アレクサンドロス大王に!」
「じつにアレクサンドロス大王は、ギリシアからインドまで散歩したとの記録が残されております」
「むむ、アレクサンドロス大王よりも広大な領土の支配者たる余にとっては、その程度の散歩は屁でもないわ!」と宮廷の外を見る帝王。「いつの間にか吹雪も嵐も止んでおるわ! おい宰相トンマールよ! 支度をせい! ただちに逍遥とやらに出かけるぞ!」
とこうして、賢者デリヘルスのおかげで苦境を切り抜けた宰相トンマールであったが、帝王の散歩に朝から晩まで毎日振り回されて、身体中に膏薬を貼らぬ日はないという話だ。