苦い文学

帝王のダイエット(ダイモーン編)

ソクラテスのダイエット法とやらを早く教えよと迫る帝王に、賢者デリヘルスは落ち着き払って次のように答えたのであった。

「ソクラテスにはダイモーンと呼ばれる存在が心の中におり、そのお告げにしたがってダイエットをしたとのことでございます。それがダイモーン式と呼ばれるダイエット法でございます」

「そのダイモーン法とやらはなんなのだ」

「ソクラテスはこのダイモーンの声が聞こえると、どこであろうと、そしてどんな気候であろうと立ち止まり、そのまま何日間も身動きしなかったのでございます。このような苦行のおかげで、ソクラテスは頑丈でしっかりした肉体を維持していたとディオゲネス・ラエルティオスは記しております。では、帝王よ、さっそく衣服と靴をお脱ぎになって、宮廷を出て外にまいりましょうぞ! これから四日間ばかり立ち続けて、このダイモーン式を実践するのでございます」

「むむ……余にはちと似つかわしくないように思えるぞ。それに、あいにく外は吹雪に大嵐じゃ……」

窓の外を見れば、季節は春、ポカポカ日和で小鳥が楽しげに歌っている。だがデリヘルス、さすが国随一の賢者だけあって、そんなことはおくびにも出さない。帝王が雨といえばこの世は雨というわけだ。

「賢者デリヘルスよ、ソクラテスのやり方は余には合わんようじゃ! 他の案を出せ! さもなければ、宰相もろとも縛首じゃ!」

もはや生きた心地もしない宰相を尻目に賢者デリヘルスはといえば微笑むばかり、さてその返事はいかに?