全世界の支配者にして諸世紀の帝王イザーカーンに押し付けられた無理難題に、青い顔で帰宅した宰相トンマール、家のものを呼び寄せ「死装束の準備をせい、明日はわしの葬式じゃ」と告げたのであった。
それを聞いていた末娘が尋ねると宰相、かくかくしかじかと打ち明ける。
「なんだ、簡単じゃない。この国一番の賢者デリヘルスに相談すれば済むことよ」
そこで宰相、デリヘルスのもとに赴いて事情を説明すると、この類いなき賢人、莞爾(にっこ)として「任せなさい」と心強い返事、宰相、ようやく人心地ついたという次第であった。
さて翌朝イの一番に、宰相とともに宮廷に赴いたデリヘルス、帝王を前に次のように語り始めたのであった。
「帝王よ、はっきり申し上げますが、この世にはソクラテスの手になる『太った豚より痩せたソクラテス』などというダイエット本はございません」
「なんだと?」と帝王の顔がさっと曇り、その手が腰の剣に伸びる。デリヘルスの後の宰相はもう生きた心地もしない。
「いやはや、お待ちください」と賢者デリヘルス。「そもそもソクラテスは本など書かなかったのでございます。ですが、帝王よ! さいわいなことに、ソクラテスのダイエット法は今に伝わっております」
「おう、そうか! 早く申せ」
と急かす帝王を前にして、なお泰然自若たるデリヘルス、その返答やいかに?