旅・観察

モロヘイヤ

チュニジアの名物料理に、モロヘイヤがある。モロヘイヤと肉が入ったシチューだ。チュニジアのモロヘイヤの食べ方は少し変わっている。日本だとモロヘイヤのよさは粘り気だが、これがチュニジアの人の口に合わないのだという。だから、納豆のネバネバなどは食べられない、と日本に住んでいたチュニジアの人が言っていた。

そこで、モロヘイヤから粘り気をなくした料理が誕生した。乾燥させたモロヘイヤの粉末を、肉と一緒に徹底的に煮込むのだそうだ。そうすると粘り気がなくなるのだという。煮込んであるから、濃厚な味になる。色は深緑、いや黒に近いこともある。

とはいえ、めったに食べられない。いつでもどこでもあるものではないらしい。手間がかかるからかもしれない。この間、チュニスのレストランの前を通ったら、ボードにモロヘイヤと書いてあった。ちょうど昼時だったので入って注文した。

平皿にドロリとした深緑の液体が入っている。これがモロヘイヤだ。料理は出てくるが、スプーンなどはくれない。一緒に出てくるパンを使って、すくったり、押しつけたり、肉をつぶしたりして食べるのだ。チュニジア人には簡単だが、これは非常に難しい。パンを何切れ食べても、シチューは減らない。しかも肉の塊もある。こいつにパンだけでどう立ち向かったらいいかもわからない。

このままではパンだけでお腹いっぱいになってしまう、と私は、お店の人にスプーンをお願いした。スプーンですくって食べ始める。またたく間に、シチューも肉もなくなってしまった。

周りでは人々がお昼を食べている。男の二人づれ、女性の一人客、夫婦、みんなゆっくり食べている。私はなんだか味わわずに食べてしまったような気がして、スプーンなど頼まなければよかった、と思った。