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切り取りの怪物(3)

切り取り報道をつなぎ合わせてできた怪物は、フラフラと街を歩きだした。まわりでは人々が悲鳴をあげ、罵り、嘔吐していた。彼の歩む道の先には線路があり、何本もの電車がけたたましい音を立てて、猛スピードで行き来していた。山手線、京浜東北線、東海道新幹線、西武新宿線、目蒲線……。

彼はまるで吸い寄せられるように線路に近づき、鉄柵をよじ登り、その上に立った。もはやひとつのことしか考えられなかった。轢き殺されてバラバラになって、もとの切り取り報道に戻ろうと、彼は突進する電車に身を投げた。

そのとき、あたたかい光が彼を包んだ。その光はふわりと線路から運び去り、安全なところに着地させた。そして、さらに驚くべきことが起きた。怪物の身体中にある切り取り報道のツギハギが、すっかり消えてしまったのだ。怪物はもはや醜くなかった。その肌はスベスベで、光り輝いていた。首に刺さっていたペンもポトリと落ちて、彼の足元に転がった。

光の中から、不思議な声が聞こえた。「私はファクトチェック機関のスタッフだ……切り取りだというお前の体の報道をひとつひとつファクトチェックしたところ、ぜんぜん切り取りではないことが確認できた……」

「フンガー!」 歓喜の叫びがその口から響き渡った。

そして今、人間となった彼は、愚かな保守政治家たちの歴史修正発言に目を光らせ、新聞をチョキチョキ切り刻んで、スクラップする毎日だ。(おわり)

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切り取りの怪物(2)

「フンガー!」

広い世界に飛び出した怪物は叫んだが、その声にはどこか物寂しげな響きがあった。なぜなら、怪物は、恐ろしげな外見とは逆に、純粋で美しい心の持ち主だったからだ。いや、そんな見た目だったからこそ、心がいっそう清らかになったのかもしれぬ。

そんな心美しい彼をもっとも苦しめたのは、出会う人出会う人、彼を見るや悲鳴をあげて逃げていくことだった。

彼は思わず醜い自分を呪った。「フンガー!」

そのときだ、耳をつんざくような叫び声が彼の耳に飛び込んできた。ハッと見ると、自動車が今にも子どもの列に突っ込もうとしているのだ。怪物は我を忘れて車の前に身を投げ、その車体を跳ね飛ばした。あわやというところで、子どもたちの命を救ったのだった*。

だが、なんということだろうか。子どもやその親たちは、怪物に感謝するどころか、ツギハギだらけのその姿に悲鳴をあげ、拳をあげて憎悪をむき出しにしたのだ。

「フンガー!」 怪物は絶望の呻き声をあげた。ああ、切り取り報道から生まれた存在に、この世の居場所などあるものだろうか?

(*怪物のいる前で、都合よくこんな事故が起きるなど、できすぎた話だと思う人もいるかもしれない。だが、我が国の車は子どもの列と見ると突進せずにはいられないのだから、こんなことは実にありふれた出来事なのだ。こうした事故を根絶したいのならば、もっとアメリカ車を輸入すべきだろう。)

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切り取りの怪物(1)

マスゴミどもの切り取り報道により、謝罪と辞職に追い込まれた元国会議員が、故郷の自宅の広大な敷地に秘密のラボラトリーを建設した。彼はそこで、狂気の実験を繰り返した末、恐るべき怪物を作り上げたのだった。

その怪物は今、全身ツギハギだらけという醜い姿で、巨大なベッドに横たわっていた。いかつい首の左右からは、マスゴミのペンが突き出している。元国会議員は唇を歪めて笑った。「フハハ、普通の人ならば一目見ただけで、そのおぞましさに気絶してしまうだろう!」

元国会議員はベッドの脇に設置されたレバーに手をかけた。「切り取り報道をつなぎ合わせて創造された我がモンスターよ!」 彼は、レバーを押し下げながら叫んだ。「目覚めよ!」

たちまち凄まじい閃光がほとばしり、その巨大な体躯が痙攣した。怪物はゆっくりと目を開けると上半身を持ち上げ、この世のものとも思えぬ恐ろしい叫びをあげた。元国会議員の声が響き渡った。「行け! お前を切り刻んだマスゴミどもを血祭りに上げ、恨みを晴らすのだ!」

「フンガー!」

モンスターは地響きを上げながら立ち上がり、ラボの壁を拳で打った。たちまち粉々に砕け散り、ぽっかりと穴が空く。そこから怪物は外へと出ていった。