風刺・戯文

イヤーワーム・フェス

イヤーワーム(耳の虫)とは、特定のメロディの一部が勝手に頭の中でぐるぐる回って止まらなくなる状態のことだ。誰にでも経験のあることだが、私はこんな名称があることを知らなかった。

イヤーワームはたいてい放っておけば消えてしまうので気にするまでもない。とはいえ、心配な場合には対処法もある。その曲をあえて最後まで聴いたり、他のことに集中したり、別の歌を歌ったりするのがいいという。

ネットを見ていると、何日も虫が居着いたせいで眠れなくなってしまったという人もいたし、イヤーワーム・フェスが開催されたという人もいた。

その人の体験談によると、しつこいイヤーワームを消そうとして、別の歌を頭に流したところ、曲が消えるどころか、2曲同時に頭の中で鳴り響く事態となったという。しばらくこの状態に耐えていたが、やがて驚くべきことに、3曲目が流れ始めた。ステージが急遽増設されたのだ。最終的には、メインステージと5つのサブステージからなるフェスが開催されることになった。

フェスではステージ間を効率よく移動するのが肝要だ。また、トイレや物販の列に下手に並んでしまった結果、目当てのアーティストを見逃したり、いい場所を確保できなかったりすることもある。

この人は、フェスは初めてではなかったから、そうした経験をもとに、スケジュール表片手に綿密な計画を立て始めた。するとそれがその人の注意をうまく逸らしたのか、音楽が消え去り、フェスもたちまち中止のやむなきに至ったとか。

苦い文学

ビッグクランチ★セオリー

宇宙はビッグバンによって始まり、それ以来、私たちの宇宙の膨張が始まった。

このまま宇宙が膨張し続けると、宇宙のあらゆる物質が永遠に拡散することになる。そして、その果てにあるのは、すべてが切り離された孤独で冷たい無の世界だ。なんと寂しいことだろうか。そのような宇宙では、隣の人に話しかけるのにもほぼ永遠のときが必要なのだ。

しかし、これとは逆の宇宙を想定する理論も存在する。ある条件のもとで、宇宙は膨張から収縮に転ずる可能性もあるのだという。この場合、ある時点で、全宇宙の物質が一点に集中することになる。このような全宇宙の収縮をビッグクランチと呼ぶ。もしもこの宇宙が一点にクランチするのであれば、地球から月に行くのも簡単だろうし、行くときも、みな肩を組んで仲良く行くことであろう。

私は断然、ビッグクランチ派だ。もちろん和気あいあいとしたビッグクランチのほうが好みということもある。だが、天文学者として、また宇宙理論家としても、私は、宇宙が膨張するどころか、すでに収縮を始めていると断言できる。

そう断言できる根拠については、ここでは述べない。専門家以外にはわからないからだ。ただ、もしあなたが「コンプライアンスだの人権だの、うるさい奴らばかりがのさばって、窮屈な世の中になった」と感じているのならば、その直感は正しい、とだけ言っておこう。

苦い文学

ケベックの難民たち

さて、ケベックの難民についても少し聞いた。彼がケベックにやってきたのは2006年12月だが、現在、ケベックには20のカレン人家族がいえるそうだ。カナダの他の地域に比べて少ないほうではないかと思う。

現在、多いのはカレンニーの人々だ。カレン人とも関係のある民族だが、ビルマには単独のカレンニー州がある。2016年以前はケベックにいなかったということだ。この最近の流入には、カレンニー人にカソリックが多いことも関係あるのだろうか。

彼の仕事についても聞いた。以前は空港で積荷関係の仕事をしていたが、コロナで失業したそうだ。現在はアルバイトをしているが、冬は仕事がないので、それで3ヶ月の予定でタイ・ビルマ国境で過ごすことにしたとのこと。

ビルマには帰ったことはあるか、と聞いたら、カナダのパスポートなので入国するのは問題はないが「帰らない。家族に迷惑がかかるから」という。以前、彼の友人が一時帰国したさい、出国後、家族が政府から厳しい取り調べを受けて、大変な目にあったそうだ。ひそかに撮られた写真まで証拠として見せられたのだ。この苦境を脱するのに、家族は相当のお金を支払ったという。

そんなわけで、彼は家族に仕送りするのでさえ、直接は送らない。「この金はどこからだ」と政府当局の関心を呼ぶからだ。そのかわり、タイに送金して、そこから友人に運んでもらうのだそうだ。

さて、カナダからの客人とこんな話をしている間に、迎えが来た。私たちはメーソートを出発して、目的地に向かうのだ。

苦い文学

結婚式のマナー

幸せいっぱいの結婚式のスピーチにもマナーがあるのはご存知ですか。知らずにマナー違反のスピーチをしてしまうと、結婚式が台無しになることも。

まず、注意しなくてはいけないのは、忌み言葉と重ね言葉。

忌み言葉とは、結婚式にふわさしくない言葉、「別れる」「終わる」「切る」「離れる」など離婚を連想させる言葉のこと。

重ね言葉とは、「たびたび」「しばしば」や「繰り返す」「再び」などのように、繰り返しに関係がある言葉です。これは再婚を連想させるため、結婚式では禁止されています。

また、忌み言葉と重ね言葉に限らず、「終わり」を意味するような表現を避けましょう。「、」や「。」も区切れや終わりを意味するので、文章では使ってはいけませんし、スピーチでも、息継ぎせずに一気に話すのがマナーです。

文末を「〜です」「〜ます」とする「言い切り」は、「切る」につながるため、これもマナー違反。文末は必ず「〜かもしれないかも」「〜なきにしもあらずといえなくもないかも」とぼかしてください。

これ以外にも、「終わり」を連想させる、動詞の終止形の使用も避けるべきでしょう。難しい場合はすべて連体形で代用するのが正しいマナーです。

苦い文学

お化けの世界

彼はもともと影の薄い人間だ。飲食店に入ってもお店の人に気づかれないので、仕方なしにそのまま立ち去ることもあるくらいだ。なんだかお化けのようなのだ。

彼は今どこかに勤めているわけではなかった。会社もなければ仕事もない。これは生物的には生きているが社会的には死んでいるような状態だ。なので、彼はますますお化けに近づいてきている。

実際、私の見るところ、彼とお化けの共通点は多かった。影が薄いことと、いるかいないか分からないということはすでに述べた。

他にもある。いつも同じ場所にいるというのもそのひとつだ。見える人には見えるというのもある。ある種の霊感がなければ、彼を知覚することはできないようなのだ。

しかし、申し添えておきたいのは、彼もまた自分がお化けのような気がしているということだ。むしろ、積極的にお化けとして生きようとしている気配すらある。

朝は寝床でグーグーグーだし、学校も試験もなんにもない。そして、昼はのんびりお散歩だ。

ますますお化けに磨きがかかってきたのか、彼は、夜の墓場を会場として、運動会を開催しようと考えるまでになった。準備に取りかかると案外忙しい。なので、手伝ってくれる仲間を募っているそうだ。

私も手を上げようかと考えている。