風刺・戯文

私の MBTI

MBTI というのは、人間の性格を全部で 16 のタイプに分類するものだ。私は詳しくはわからないし、知る必要もないが、16 のタイプは、ESTP とか、ESFJ とかいうように 4 つのアルファベットで表される。また、それぞれのタイプにわかりやすい名前がついている。例えば INFJ は「助言者・提唱者」だ。

MBTI の判定法は、ネットで見つけることができる。質問に答えていけば、最終的に自分のタイプがわかる。

この性格診断は、しばらく前から若い人の間で流行っている。恋愛版の MBTI まで最近出てきたそうだ。若い頃は自分がどんな人間だか知りたくなるものだから、こうした判定法が魅力的に思えるのだろう。もっとも、客観性の点で疑わしいと批判する人もいる。私もインチキだと思う。

だが、ある人が、私に MBTI をやってみるようにすすめてきた。そこで、やってみることにした。

最初の質問は「定期的に新しい友人を作っている」だ。これに、「そう思う」から「そう思わない」までの間に設定された 7 段階のどれかにチェックを入れる。こんな質問にいくつも答えなくてはいけないそうだ。

私はもう面倒くさくなって 1 問目でやめた。MDKS。

苦い文学

ピラミッドは宇宙人が作った!

宇宙人が世界の最果てに漂う青い星に飛んできて、人類を発見したとき、この幼い種族の発展を願わずにはいられなかった。

そこで、当時もっとも文明の進んでいたエジプトの王の前に現れ、こう言った。

「私は遠い世界からやってきた最高の賢者だ。私たちの力を、諸君のために提供しよう。望みを言うがいい」

強大な王は言った。「私はかつて、自分が永遠に王国を支配できるようにと、巨大な建築物を作ろうとしたことがあるのだ」

王は、倉庫に入れられたまま忘れ去られていた図面を持ってこさせ、宇宙人に見せた。「ピラミッドだ。だが、どの賢者に見せても、不可能だと言い張るのだ。それで私は諦めていたのだが、もしもお前が最高の賢者というのならば、これを作ってみよ」

宇宙人は王の無知に微笑みながら、承諾した。宇宙人は、異星の未開人のために技術を使用する許可を得るため、さっそく宇宙稟議書を作成し、本星へと送った。その稟議書が宇宙のあちこちで星の数ほどの承認をもらい、いくつもの部署を通過し、最終的な決済が降りるまで、気の遠くなるような時間がかかるのだった。

宇宙人が力を携えてやってくるのをエジプト人の王は待ち続けた。王はついにこの世をさり、次の王が即位し、さらに次の王、そして何代も経て、王朝そのものが変わった。

宇宙人の約束はしっかり伝承されていたから、新たな王朝の王も待ち続けた。そして、さらに数代経て、新たに玉座に登った王は、とうとう痺れを切らして言った。

「そもそも得体の知れぬ賢者に頼ったのが間違いのもとだ。我々でもう作ってしまおう。真剣に取り組めば、きっとできるはずだ」

そんなふうにして、エジプト人たちはピラミッドの建設に本格的に取り組みはじめた。宇宙人がいなければ、そんな成り行きにはならなかったのだから、ピラミッドは宇宙人が作ったといってもいいだろう。

苦い文学

なんとかしてやれよ

私たちの町の広場に見知らぬ人が現れた。一日中、広場のベンチに座っている。夜はどうするかというと、そのベンチで寝るのだ。食べ物はどこからかかき集めてくるらしい。こそこそと誰にも見られないように食べていた。

広場に住み着いてから三日ほどした後、私たちはこのよそ者が倒れているのを見つけた。苦しそうに喘いでいる。

私たちは遠巻きにしながら様子を見ていた。誰かが「なんとかしてやれよ」と言った。すると別の声が答えた。「そうだ。行政は何をやっているんだ」

よそ者はなおも苦しそうにしながら、私たちのほうに顔を向けた。掠れる声で「水……水……」というのが聞こえた。

誰かがまた言った。「なんとかしてやれよ」 別の声が苦々しげに答えた。「まったくだ。日ごろうろちょろしている活動家たちはなんで放っておくのか」

よそ者は苦悶に満ちた顔を空に向けた。そして、地響きなような唸り声を上げると、それきりもう動かなくなった。

誰かが憤りの声を上げた。「行政が見殺しにしたのだ!」 別の者は 「活動家どもってのは口先ばかりで頼りにならんな」と呆れてみせた。

そして、私たちは、社会的弱者に気づけてやれた自分たちに満足しながら、広場から散っていった。

苦い文学

何者かに

私がまだ紅顔の少年だったころ、人生はあたかも行手に広がる大海原のようだった。

そして、少年時代を終え、ようやく人生の浜辺に立った私はといえば、ひるむばかりで、前に進むこともできなかった。

私には夢がいくつもあったが、人生の大海原を前にしては、すべてが実現不可能な戯言のように思えた。

自分はいつか、夢を実現して何者かになることができるのだろうか、やがて、そんな不安が私を苦しめるようになった。

もし何者にもなることができなかったら……例えば、名刺に書けるような肩書きがないのを誤魔化すために「人間」というユーモア肩書きで取り繕うような大人になってしまったら……そう思うと夜も寝られなかった。

悩みはあまりにも深く、我慢の限界を超えたため、私は先生のところに行き、すべてを打ち明けた。

先生はこう言われた。

「何者かになりたいというのならば、ミイラを取りに行きなさい。成功すれば、ミイラ取りになれる。そして、失敗しても、少なくともミイラにはなれるから」

その時の私はなんだかバカにされたように感じたものだった。だが、結局何者にもなることができなかった今の私からすれば、ミイラになれるということすら、破格の好条件のように思える。