風刺・戯文

CDケースの悲劇

「死者に鞭打つ」の謗りを受けても、私たちは言わずにはいられない。私たちはあなたのことがきらいだったと。

私たちは否定はしない。あなたのおかげで私たちの生活は豊かになったことを。だが、あなたが手を差し伸べてくれたとき、私たちは心の中であなたを憎んでいた。あなたが賜物を運んできたときも、私たちはあなたに対する罵りを忘れなかった。そして、あなたの時代が終わった今、私たちはあなたに感謝しつつも、あなたに対するイラだちも想起せずにはいられない。

ああ、CDケースよ、あなたはなんと厄介な存在だったことだろうか。あなたを積み重ねれば、必ずザザーッと崩れずにはいなかった。手で持ち運ぶときは、縦に積んでも、両手で横に重ねて持っても、必ず床に順次落下していった。あなたを棚に並べれば、端の一枚は断固としてパタリと倒れた。そのせいで私たちは二枚組を端にもってこねばならなかった。そのせいで整然としたアーティスト順が台無しになった!

あなたは買ったときですら私たちを苦しめた。どうしてあなたを包むフィルムはあれほど剥がしにくかったのか。CDケースの側面のフィルム接着部をいくら爪でカリカリやっても絶対に剥がれない。フィルム剥がし用のテープすら端っこを掴むのは容易ではないし、できたとしても途中で切れるのだ。

私たちはあなたに問いたい。いったいあなたはどうしていつの間にかひび割れていたのか、と。落としたこともなければ、踏み潰したこともないのに。それに蓋を開閉させるヒンジの部分。あそこを破壊してパカパカにすることのいったいなにが楽しいのだ。教えてほしい。

もちろん、あなたは答えない。私たちはいくどもあなたに詰め寄った。だが、あなたはいつもカラカラと音を立てるだけ。ああ! それは折れたツメが立てる音だった! CDを中央で固定するヤツの!

今、私たちはもはやあなたを必要としない。ビデオがラジオスターを殺したように、サブスクがあなたを葬り去ったのだ。いずれ私たちを除いては、あなたの悪行を知るものもいなくなるだろう。そして、あなたの思い出も私たちとともに消えることだろう。