旅・観察

理由

水の問題はターウジュート村だけではない。周辺の村でも同じだそうだ。

日本でもどこでもそうだが、結婚式は大きなイベントだ。チュニジアの昔話の結びには、幸せに結ばれた王子とお姫様の結婚式は七日間続き、さらに七日間続きました、といった定型句がよく出てくる。これに続いて、そのあいだ町の人々は料理をしませんでした、という文句も出てくることがある。つまり、結婚式の間は、町中の人々に食事がふるまわれるのでその必要がないということだ。

二週間というのはおとぎ話の誇張だが、今でも七日間おこなう地方もあるそうだ。ターウジュート村周辺にもその伝統は続いているとのことだが、ある村で最近あった結婚式は三日間だけだったという。なぜなら、食事をふるまうためには水が必要だから。

またあるベルベル語の村では、毎年一週間の祭りが開催される。その期間、村はチュニスやフランスから里帰りする家族や、一緒にやってきた友人たち、その他観光客でにぎわう。

村にとっては年に一度の書き入れ時だ。レストランでは、伝統的な料理が提供される。カフェはほとんど二十四時間営業だ。このときだけ使われる特別な宿泊施設もあって、そこらのホテルより高い。

だが、水がなくなった。水も出なければ、シャワーも浴びられない、そんなところに遊びに来る観光客はいない。村は貴重な収入源を失い、住民たちの暮らしはますます厳しくなる。村を離れる人も出てくる。

ターウジュート村を後にしたSさんと私は、山地にある村をいくつか通り過ぎたが、崩れかけた空き家をよく目にした。ターウジュートにあるSさんの家も同じだ。

水がなくなると、人がいなくなる。この村の言語が消えつつある理由のひとつに、私はようやく気がついた。