苦い文学

濁点の復讐

私(熊切)のもとに以下のようなメールが送られてきたので、そのままここにコピーする。


はじめまして

私は名を新垣と申します。突然のメール失礼いたします。

どうして私があなたにメールを差し上げたか、ご不審に思われるかもしれませんが、私の名の読みが「あらかき」であると記せばおおかたご察しいただけるのではないかと思います。

そうです。私はあなた、熊切(くまきり)さんと、同じ悩みを抱えるものでございます。

私たちは、世間の無理解によりなんとつらい思いをしてきたことでしょうか。なぜ、人々は厚かましくも勝手に濁点をつけるのでしょうか!

「あらがきさん、おはようございます」

ああ、爽やかな朝も、この濁点ひとつでもう不愉快なものと変わります。熊切さんも、やはり濁点つきの「くまぎり」という読み方に苦しまれてきたことと思います。

私たちにとって、濁点は悔しい悔しい涙なのです。ですが、もう、こんなことはたくさんです。立ち上がるときが来たのです。

やり返してやろうではありませんか。「佐藤」を「さどう」、「佐々木」を「さざき」、「ふじた」を「ふじだ」と呼んで、その清ました面の高慢な鼻をへし折ってやろうではありませんか。「高橋」だって「たかばし」です。いや「だがばじ」で結構! これまで私たちが苦しんできた分だけ復讐してやるのです。

もう濁点は涙ではありません。今日からは私たちの弾丸となりました。 

さあ、一緒に戦いましょう! 日本中に濁点の雨を降らせて、晴天を濁らせてやりましょう……