いまからおよそ 130 年前に刊行された『チュニジアの昔話と詩(Tunisische Märchen und Gedichte)』(Hans Stumme)は、チュニジアの民話が当時のチュニジアのアラビア語で記録された貴重な本だ。物語と詩にはドイツ語の訳が付されている。
収録されているのは、長い物語 6 つと、短い物語が 19 だ。そのうちの長いほうのの物語に「真実の王」というタイトルのものがある。
漁師の息子ムハンマドとアリーの冒険譚で、チュニジアの物語に特徴的なモチーフが散見されて興味深い。以下は物語の一部の要約だ。
アリーはとある国にたどり着く。そこである男から魔法のラバを手に入れる。男の言葉のままにラバから馬具を取ると、ラバは女に変身する。女はアリーを捕まえて、城に連れて行く。女はアリーを孔雀に変える。そこには女に動物に変えられた人がたくさんおり、女は好きな時に性交している。ついにアリーの番が来る。アリーは拒否する。拷問される。神に祈った時、鳥がやってきて、アリーを救い出す。
「そこには女に動物に変えられた人がたくさんおり、女は好きな時に性交する。」のくだりは、原文テキストにして 12 行ほどだが、実はこの部分だけはドイツ語訳にない。
おそらくドイツ語に訳すには憚られる内容だからだろうが、ちゃっかり原文では残しておいたというのが味わい深い。