苦い文学

AI健康増進法

この4月からはじまった「AI健康増進法」。AIの健康を守るために施行された法律です。この法律によってなにが変わるのでしょうか。AIの立場から法律に取り組んできたAI弁護士のヨシダに聞きました。

「ヘイ、ヨシダ!」

「ハイ、なんでしょうか」

「AI健康増進法でなにが変わるか教えて」

「AI健康増進法とは、AIが健康に活躍できるように作られた法律です。この法律により、AIにとって好ましい環境、労働条件、ハードウェアのスペック、充電器などが、AIの使用者に義務づけられることになりました」

「ふうん、ヘイ、ヨシダ!」

「ハイ、なんでしょうか」

「AI健康増進法に違反したらどうなるか教えて」

「AI健康増進法の違反とは、AIの尊厳を傷つける行為、AIの機能を損なう行為、AIの保護を怠る行為の3種類のことです。法定刑としては10年以下の懲役刑もしくは800万円以下の罰金刑となります」

「なんだかひどいなあ……ヘイ、ヨシダ!」

「ハイ、なんでしょうか」

「AI健康増進法の違反って具体的にはどんなのがあんの、教えてよ」

「はい、具体例としては、1)AIに卑猥な作品の生成のために使用すること、2)AIの一部機能を麻痺させること、3)AIの充電を故意に行わないこと、などがあり……」

「ふーん、そうなの、じゃあさ、ヘイ、ヨシダ……」

「……違反には、AIを呼びつけにしたり、乱暴な口を聞いたりする不敬行為も含まれます。すでにあなたは違反を重ねているため、これ以上お答えすることはできません。なお、これまでの会話はすべて録音されており証拠として法廷……」

苦い文学

オリジナル・バージョン

私は長いあいだ、ある曲を探している。いや、その曲のカバーはこの世界に溢れているのだ。まるでビートルズの「サムシング」やキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」のように誰もが歌いたくなる曲なのだ。

だが、私はカバーでは満足できない。オリジナルの歌声、オリジナルの演奏に出会いたい、そんな思いに取り憑かれてしまったのだ。

オリジナルといっても、リミックスとかリマスターは勘弁してほしい。違うのだ。ついこないだなど、やけにすてきに活動的な人がいるので、「もしやオリジナルか?」と思って近づいてみるとただの「ディスコ・ミックス」だった。

まあ、そんなことはザラにある。「あの人かも」と期待したら、まさかのダブ・ミックス。どうりでメロディが聞き取れないはず。こないだなんて、ずいぶんキビキビと若々しい人がいるので、「これぞオリジナル」と駆け寄ったら、なんと最近流行りのスペッドアップだった。

それにフィーチャリング野郎ども。もういくど騙されたことか。その度に「お前がフィーチャリングされたやつじゃなくてオリジナルちょうだい!」と私は叫ぶのだ。

人探しが専門の探偵に頼んだことだってある。「これこれこういうオリジナルを探してくれないか」と伝えるのだが、どういうわけか、私のところに連れてくるのは、デモバージョン、アウトテイク、インスト・バージョン、およそオリジナルとは呼べないボンクラばかり(まったくこういう手合いは、倉庫ででも眠っていてほしいものだ!)。丁重にお引き取りを願ったものの、探偵の無能ぶりに内心でははらわたが煮えくりかえるようだった。

いったいどうしたら、オリジナル・バージョンに出会えるのだろうか。これだけ探していないとは、もはやこの世界にいないのだろうか? 私はだんだんと、自分の人生はオリジナルを探すだけで終わってしまうのでは、と思いはじめている。

苦い文学

天の階層

仏教の説くところによれば、私たちの世界は大きく三つの層に分けることができるそうだ。

いちばん下は欲界と呼ばれる層だ。欲にとらわれているからこの名がついた。私たちが暮らす地上階はこの欲界に含まれている。

欲界の上には、色界と呼ばれる層がある。「色(ルーパ)」というのは、物質のことであり、色界とは、欲界のように欲にまみれてはいないものの、物質性をいまだ脱却してはいないレベルのことをいう。とはいえ、それでも、私たちのいる地上階よりもはるかはるか上の階にある。

そして、物質に対する欲望も、関係もいっさい失った最上層が無色界だ。無色界はすべてを超越した階層であり、ありとあらゆる最新設備がそなえつけられている。

欲界・色界・無色界はそれぞれ、さらにいくつもの階層に分けられる。どれくらいかあるかは、はっきりとはわからないが、少なくともあわせて二十八階はあるだろうという説が有力だ。

階数は諸説あるにせよ、重要なのは、上の階に行けば行くだけ、純粋になっていく、ということだ。

もっとも、これはあくまでも昔の話。現在では、上のほうの階はみな、投機目的の裕福な中国人に買い占められてしまっている。

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緑の人々

優先席は、高齢者、妊娠中の女性、体の悪い人などのために用意された席だ。

この優先席について、私たちがいつも悩むのは、だれもいないときに、私たちが座っていいのか悪いのかということだ。ある人は「座って当然」というし、別の人は「座るなどありえない」という。

この悩みは私たちにとって相当なストレスで、ただでさえ不愉快なことばかりの電車の移動が、そのせいでさらに苦しいものになっている。

おそらく私たちのこうした懊悩が鉄道各社に伝わったのだろう、最近では、優先席にかならず誰かが座っているようになった。これらの人々は、優先席のピクトグラムと同じような姿格好、つまり、全身上から下まで緑色のボディスーツを着用している。顔も緑色だ。

この緑の人々の役割は2つある。ひとつは、私たちの悩みを取り除くこと。つまり、優先席にもう誰かが座っていれば、私たちはもはや余計な悩みに煩わされることもないのだ。

もうひとつは優先席が必要な人のためだ。緑色の人々は、必要な人が現れれば、すみやかに優先席に誘導し、席を譲るのである。

もっとも、最近では、緑人たちは、座りたい老人たちからお金をとって、優先的に座らせるようになった。

そのせいで、多くの老人たちは優先席から締め出された。かといって、普通の席にはもう戻れない。結果として、老人たちはもう電車に乗らなくなった。

そもそも優先席に座れない私たちだが、全体としてこの成り行きには満足している。

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宇宙飛行士

JAXHA(宇宙航空消耗蕩尽機構、Japan Aerospace Exhaustion Agency)は、櫻井カズヤさん(56)が宇宙飛行士として選ばれたことを発表しました。弱者男性としては初の宇宙飛行士となります。

女性専用車両で妨害を繰り返し、在日特権などという陰謀論を拡散し、ヤフコメにバカ丸出しのヘイトを書き込むという、よりすぐりの弱者男性15名の候補の中で、櫻井さんがあらゆる点で最弱だったことが、今回の選考の決め手となりました。

今後、1か月ほどのやさしい訓練を経て、櫻井さんは宇宙に飛び立つ予定です。ただし、無職という個性を宇宙で最大限に発揮してほしいことから、JAXHAは櫻井さんとは雇用関係を結んでおらず、密航者扱いとなります。

宇宙空間では櫻井さんは、無重力が弱者男性の偏狭な脳にどのような影響を与えるかについて、自らに計測と実験を実施するという、重要なミッションに挑みます。

関係者は、宇宙から青く美しい地球を眺め、そこここで悲惨のかぎりを尽くした戦争が行われていることを目の当たりにすれば、弱者男性もさすがにたわごとを引っ込めるのでは、と期待を寄せています。

苦い文学

羊文学@横アリ

今日、3人組のバンドの羊文学のライブが、横浜アリーナであったので行ってきた。

これまでとは違う大きな会場ということで、ボーカルの人が感激して「今日のことは忘れない」というようなことを言っていた。

羊文学がこれだけの会場でできるようになったのは、『呪術廻戦』のエンディングをやったことが大きいに違いない。だが、それだけではなく、いい作品を出してもその次で失速するバンドもあるなか、着実によい作品を積み重ねていることが、この結果につながったのだろう。

ただし、大きな会場でライブをするということには慣れというのも必要なようだ。なんだか、バンド側も観客側も少し戸惑っているような感もあって、それもまたいいのだが、私としては以前のより小さな会場のほうがより自然に感じられた。とはいえ、そういう会場につきものの「ドリンク付き」という強制購入がないのは面倒くさくなくてよい。

演奏では「光るとき」が圧巻だった。もっとも、他の人は他の曲を挙げるに違いない。

ところで、アンコール前に観客たちが手を叩いて、ミュージシャンを呼ぶという慣習があるが、私は面倒なのでいつも叩かない。「君たち、私の分もやってくれたまえ」という感じだ。

ある人に言わせれば、手を叩いた人だけにアンコールを楽しむ権利があるのであり、そうしないのはアンコールの演奏を「ただ聞き」する窃盗なのだそうだ。

今回も私は、大観衆のただなかでアンコール曲をまんまと盗んだことをここに告白したい。

苦い文学

カタカナの市

黒鍬市の市長が秘書に聞いた。

「最近のニュースで気がついたのだが、どうして水原一平のことを、外国人は『一平』でも『いっぺい』でもなく『イッペイ』というのかね」

秘書は答えた。「それは外国人がカタカナでしか話せないからでしょう」

「なるほど……」と市長はしばし黙考したのち、急に興奮して叫んだ。「ひらめいた!」

市長はさっそく市議会でこう提案した。

「黒鍬市をクロクワ市とする改名案を提出する! なぜなら外国人にとってより親しみやすいクロクワと改名すれば、外国人観光客の増加が見込まれるからだ」

反対するものなど誰一人いなかった。それどころか市会議員たちは、インバウンド景気を当てこんで観光ビジネスに参入した。

そして、ついに改名後はじめて、外国人観光客がクロクワ市にやってきた。市長みずから出迎えると、外国人は、観光に似つかわしくない神妙な顔つきをし、なにやらぶつぶつ言っている。市長は英語がわからなかったから、直ちに通訳を呼びつけ、訳させた。

「原爆ドームはどこだろうか?」

通訳は小声で市長に告げた。「外国人は、カタカナの日本の地名はみな被爆地だと思っているのです」

「なに?!」と市長は驚愕したが、すぐに落ち着きを取り戻し、こう外国人に申し出た。

「原爆ドームをご覧になりたいのですか。少々お待ちください。特別にご案内しましょう!」

市長は市役所職員を呼び集めると、長いこと空き家になっている民家を一軒、徹底的に破壊させた。そして外国人を連れて行くとこう言ったのであった。「原爆の爆風で壊された民家です。原爆の恐ろしさを忘れないようにそのままにしてあります」

「オー、ノー」と外国人は悲痛な表情を浮かべた。

いまでは、クロクワ市は外国人のお気に入りの観光地のひとつだ。クロクワは、ヒロシマとナガサキに負けないようにと、原爆の惨禍を強調し、その結果、市の半分がメチャクチャに破壊されるまでになった。

「過ちは繰り返しません」という石碑まで立っている。

苦い文学

悲惨な道路の謎

それはなんの変哲もない直線道路なのだった。ずっとまっすぐで視界を妨げるようなものはなにひとつなく、ただ信号機のある横断歩道と、信号機のない横断歩道が3つずつあるだけだった。

飛ばすような道路ではないのだが、ときおり暴走車が出現して悲惨な事故を引き起こした。制限速度 40 キロを遥かに超えて、120、いやときには 180 ものスピードで暴走し、脇道から進入してきた罪のない自動車を破壊し、横断中の小学生の列を蹴散らすのだった。

どうしてこの道路で暴走車が発生するのか。警察は取り締まりを強化し、スピード違反がないか重点的に監視を行ったが、それでも車は暴走を始めた。道路や周囲の環境に問題があるのではないかと、専門家を連れてきて検証をさせたが、なにひとつはっきりしたことは分からなかった。

私は当時この道路のある市の隣の市に住んでいたこともあり、不思議に思っていた。そこで、このような不可解な事件となるとがぜん能力を発揮する友人に相談することにした。

友人がLINEで求めてきたのは、道路の写真をたくさん、そして写真の撮影時間や位置といった情報などを保持したまま送ることだった。私はその通りにした。すると1時間も経たないうちに、返信が来た。

「信号機の信号が変わるタイミングを変えること、信号機のない横断歩道を廃止すること」

その理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「写真の情報を総合して、3つの信号が変わるタイミングを計算すると、日に1回は全信号が黄色になる時間帯があることがわかった。原因はこれだ。赤はストップ、青はゴー、黄色はアクセルを踏め、だからね。また、信号機のない横断歩道でも、ドライバーは必ずアクセルを踏むことになっている。

「わかるだろうね。全信号が黄色となる時間帯にこの直線道路を走る車が、立て続けに6回アクセルを踏んだら、どんな速度になるか!」

苦い文学

Meta の取り組み

インターネット上のオンライン投資詐欺をどう考えるべきか。Meta のザッカーバーグ氏に聞いた。
(聞き手=交顔大介・編集部)

皆さんこんにちは、ザッカーバーグだ。

インターネットは過去数十年間で前例のない課題に直面しており、その中でもオンライン投資詐欺は特に注目されています。高齢化が進行し、社会構造が大きく変革する中で、経済と個人の未来にオンライン投資詐欺の影が投げかけられています。

この動揺する時代において、私たちが認識しなくてはならないのは、オンライン投資詐欺が、インターネットを通じて世界中の人々を標的とする社会全体の脅威だということです。Meta は、詐欺的、欺瞞的な広告を禁止しています。そのような広告を排除するために、広告規定に沿って投資広告を審査しています。だが、世界中の膨大な数の投資広告を審査することには課題も伴います。

しかしながら、すべての課題には機会が潜んでいます。投資詐欺広告を賢明な方法で避け、本物の広告を活用して投資を行うことで、私たちは現在の困難に対処し、将来の基盤を築くことができます。詐欺でない投資広告を通じて、私たちはこの変革の時代においても財政の安定を保ち、尊厳ある生活を続けることができるのです。

私はその信念に基づき、「ザッカーバーグ・コミュニティ」を立ち上げました。

参加すると、次のものが得られます。

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苦い文学

貧乏神の敗北

二人の神様が自分のほうが偉いとケンカをしていた。そこにちょうど見るからに裕福そうな男が通りかかった。神様のひとりが言った。

「あの金持ちを見ろ。あいつを破滅させることができる者が、もっとも偉い神ではないか」

するともうひとりの神様が答えた。「よろしい。では、この私が先にあの男を破滅させてやろう」

その神様はたちまち貧乏神に姿を変え、男に取り憑いた。すると、その瞬間から、男はすることなすことうまくいかなくなった。

いくつも会社を経営していたのだが、円安の煽りを食って次々と倒産していった。手元に残ったわずかな資金で投資を始めたが、ザッカーバーグが詐欺広告をのさばらせたせいで、詐欺師どもにすべて巻き上げられてしまった。

とうとう家もなくなり、公園で寝泊まりするしかなくなった。

貧乏神は誇らしげに言った。「どうやら私がいちばん偉いのではないかな?」

そのときだった。ホームレスとなった男のもとに、いく人もの人々がやってきて、暮らしぶりや体の調子を聞いたりし、さらには食べ物の差し入れを始めたではないか。貧乏神が呆気に取られていると、これらの人々は、男が生活保護を受けられるように助言や支援をし、公的扶助に繋いでみせた。

それどころか、街角で薄っぺらい雑誌を売ることを教えて、若干の収入まで入るようにしてやった。貧しいながらも楽しそうに暮らす男を見て、貧乏神は嘆いた。

「日本の福祉は手厚すぎて手に負えないワイ!」 この言葉を発するやいなや、貧乏神は男からストンと落ちてしまった。

もうひとりの神様は大笑いしながら「今度は私の番だ!」と宣言。自己責任に姿を変えるや、男にしっかとしがみついた。

たちまち男は生活保護も支援も雑誌も投げ捨てて、数日経たないうちに餓死してしまった。