苦い文学

聖なる泉

2度目のワクチン接種をした日の深夜から、2日間ほど発熱した。

最初に熱が38度を超えたとき、私は小躍りした。発熱したら、横になりながら一日中韓国のドラマを見ていようと思っていたのである。

しかし、すぐに悪寒と震えが追いかけてきて、のんきにドラマを見るどころではなくなった。それどころか、私は熱にうなされ、その間中、頭の中で誰かが韓国語で話しつづけていた。ただし、私は韓国語はわからない。

まるで夢で韓国のドラマを見つづけているかのようだった。苦しくて目が覚めるが、ウトウトするとまたドラマが始まった。

その内容はまるで覚えていないが、ひとつだけ記憶に残っているのがある。

私の熱を下げるためには、泉の水を頭にかけるべしという診断が下された。だが、その泉は離れた場所にあり、バケツリレーで運ぶことが推奨された。それができるのは、BTSやSEVENTEEN、DKBのような大人数の男性グループだけだ。熱に苦しみながら私は待ちつづけたが、来たのは分裂した後の東方神起であった。

熱が落ち着いた後は、布団の中で韓国のドラマを見て過ごした。

苦い文学

リテラシー教育の必要

リテラシーとは情報の真贋を見分けるための指標であり、特に重要なのは、その情報の発信者が専門家であるかどうかである、と前に書いた。

情報過多ともいえる現代では、このリテラシーについての教育もまた急務となっている。つい最近のことだが、そのことを痛感させる出来事に遭遇した。

私が電車の中で痴漢をしていたときのことだ。私は不覚にも周囲の乗客に取り押さえられ、次の停車駅で駅員に突き出されたのだった。

私は否認した。しかし、私を捉まえた男たちも、痴漢をされた女も私がやったと主張し、駅員もそれを信じかけているようだった。そこで、私は次のように訴えたのだった。

「私はこの道何年もの痴漢の専門家であるが、あなたはその専門家の『やってない』を信じずに、これら素人の言う『やった』を信じるのか」

こう迫ると、駅員は私を警察に引き渡した。私は警察にも同じことを言い、さらには裁判でも同じことをはっきりと言ったのである。

まったく、専門家が重んじられないとは嘆かわしい世の中だ。私は刑期を勤めあげたらリテラシー教育にこの人生を捧げたいと思っている。

苦い文学

お昼ご飯

今日は、ある方の貴重な蔵書をいただいた。

その方はもう亡くなられたが、お宅には蔵書がそのまま残されている。管理されている方は、これらの書籍をただ単に処分してしまうのではなく、必要とする人に利用してほしいと希望されたのである。

お宅に伺って、その蔵書を拝見したのだが、その量と、丹念な収集ぶりに驚かされた。さっそく私は書棚を徘徊し、数々の興味深い書物を確保したのだった。

しかし、と膨大な書籍を前にして私は思った。本を集めすぎるのも考えものだ、と。どんなに貴重な書物も、残された家族にとっては重荷でしかないのである。

今年で五二歳になる私は、終活にはまだ少し早いかも知れないが、今から少しずつ本などを処分しておこうと決意した。ただ、私が今回入手した本の量を前にしては、その決意も水の泡なのが残念だ。

お昼もご馳走になった。管理されている方は私よりも年配で「若いのだからたくさん食べて」と勧めてくださった。私はその言葉に多少の疑問を感じつつ、たくさんいただいた。

苦い文学

リテラシー

ある識者によれば「ネット上の情報はすべて嘘」なのだそうだ。

確かに、インターネットに流布する情報のうちには、悪意ある虚偽も相当あるから、そのようにはじめから疑ってかかるのもありといえるだろう。

しかし、情報の真贋を見分けるいくつかの指標がないわけではない。こうした指標はリテラシーと呼ばれるが、私の場合は、誰がその情報の発信者であるかに留意している。具体的にいうならば、その発信者が、専門家であるかどうかだ。

例えば、今の天気を知りたいとしよう。まず、気候の専門家の監修するサイトAを見ると「晴れ」となっている。情報源の不明なサイトBでは「晴れのち曇り」だ。いっぽう、窓から外を眺めると、大雨が降っている。このうちどれが今の天気として正しいだろうか?

もちろん、お天気サイトAである。なぜなら、信頼できる専門家が関与しているのはこのサイトだけだし、私は天気の専門家ではないからだ。

苦い文学

千のコロナになって

八月になってからワクチンを打とうと思っていたら、市内ではもう予約はできないのだった。人の話によると一年後だとかいう。

職域接種という手もあるが俺は無職なので可能性はない。無職域接種だったら、と希望を持ったが、ワクチンどころか平手打ちを食らうおそれもある。俺はついに諦めて、こんな歌を詠んだ。

ワクチンの争奪戦に敗れし我は新たなコロナに生まれ変わらむ

どうせコロナにかかって死ぬのならば、もっと新型でもっと強力なコロナに転生して、この世を席巻してやろうと考えたのだ。

俺たちは、次の次の御代ぐらいに、どこかの密林で誕生するだろう。名づけに困るほどの株を秘め、もう誰もが数えることを諦めるぐらいの波を従えて、放たれるだろう。そして、触れる者をみな陰謀論者へと変え、人類を滅亡の淵へと追いやるのだ。

だが、その後、あるツテを使ってワクチンを接種することができた。今は一刻も早くコロナが収束することを祈りながら、韓流ドラマを見る毎日だ。