風刺・戯文

信じることは魔法

……友人も家族も、仕事も、生きがいも、すべてを失い、ただ孤独にポツンと座っていた私に、あなたはそっと寄り添ってくれました。

どこを見回しても希望の光はなく、私はただ暗闇を歩くばかり。希望を見出すのは、希望を信じている人だけなんですね。自分すら信じられない私にはとても無理……。絶望のあまり力を失い、へたり込んでいた私のところにやってきてくれたのが、あなたでした。

なにも言わずにあなたは、私のそばに座ってくれました。あなたの強く、そして思いやりにあふれた心を信じるには、それだけで十分でした。私はいつしか暗闇の中にかすかな希望を見出していました。もしもこの世界に魔法があるとしたら、それはきっと「信じること」なのですね。

信じる力を失って、ただ孤独にポツンと座っていた私に、あなたはそっと寄り添ってくれました……。


山手線の空席に座ったら、隣に座っている男がこんな手紙を渡してきた。私はもちろん席を立ち、隣の車両に移った。自分の隣に人を座らせない手法のひとつと思われる(他には、丸めたティッシュを置いておくというのもある)。

苦い文学

ライブ・オン・ステージ

私たちの人生はまるでステージのようだ。私たちはそのステージの上で、生涯出会うすべての人々を前にして、曲を演奏し、歌うのだ。

私たちは、自分の人生に関わりのあるすべてのことを歌う。演奏や歌声の良し悪しは関係ない。自分に与えられたものを、力のかぎり鳴り響かせるのだ。

数々の曲の演奏ののち、やがて、セットリストの最後にいたるときが来る。私たちはその最後の曲の演奏が終わると、楽器を置き、ステージの袖に引っ込む。楽器は肉体だ。プレーヤーは魂だ。だから、ステージの上には魂を失った肉体だけが残される。

すると、小さな拍手が客席から聞こえだす。拍手は少しずつ大きくなり、ついにはひとつのうねりとなって、会場を揺るがす。そのときになってはじめて、ステージを離れた私たちの魂に拍手の音が届く(魂はステージの外に出ると意識が混濁しだす)。

「求められている! アンコールだ!」 私たちの魂は目を覚まし、ステージに引き寄せられる。私たちは蘇る。再び楽器を手に取り、最後の曲に取りかかる……

私たちはこのようにして人生の最後のチャンスを与えられるのだ。ただし、生前、コンサートで「アンコールするのはお約束だろ。手を叩くなんて無意味さ」とか「俺が手を叩くまでもない。他の客に叩かせておきゃあいいのさ」などと言って、拍手をしなかった者は、そのかぎりではない。

苦い文学

世界大戦のパーセント

ロシアがウクライナに侵攻を始めた時以来、私たちは世界大戦の可能性について聞かされてきた。

このままロシアが勝てば、ヨーロッパはどの国も安全とは言えなくなる、戦争はヨーロッパ中に広がるのだ、と。

それに、中国が台湾に侵攻する可能性だって無視できなくなった。そんなことが起きれば、アジア中が戦争になるに決まっている。

そして、パレスチナの危機的状況だ。イスラエルの対応次第では、間違いなく世界大戦が始まる、そう断言する人もいる。

世界大戦の確率はこれまで以上になく高まっているのだ。ロシアの侵攻開始時にはその確率は20%だったが、今では70%に高まっているという。

つまり、世界大戦を回避するためにはこのパーセントをなんとしても下げなくてはならないのだ。この世界的危機において、いま、岸田首相のリーダーシップに期待する声が世界各国から寄せられているという。

「すぐパーセントが低くなる」「もうどうやっても上がらない」

世界が認めるその手腕に注目だ。

苦い文学

NHKへのお願い

NHKの朝のニュースのアナウンサーのみなさま

落ち葉はらはらと散る晩秋の候、皆様におかれましては、ますますご清祥のことと心よりお喜び申し上げます。

毎朝のニュース、楽しく拝見させていただいております。興味深いニュース、タメになるニュース、いつもありがとうございます。

このたびお手紙を差し上げましたのは、ひとつ折り入ってお願いしたいことがあるからです。

我が国の深刻な分断を阻止するために、関東甲信越のニュースを直ちに廃止してほしいのです。

ご存知の通り、いつも朝7時前になりますと、「これからは関東甲信越のみなさんにお伝えします」と特別なニュースが始まります。私は、関東のものでして、関東甲信越が特別に取り上げられ、注目を集めること、いつも誇らしく、うれしく思っております。

ですが、その一方、関東甲信越以外の視聴者はいったいどんな気持ちで、このニュースを見ているのか、お考えになったことはありますでしょうか。

間違いなく、関東甲信越以外の地方の視聴者にとってはこの時間はとても退屈なはずです。いや、それどころか「同じ受信料を払っているのに!」と腹を立てているかもしれません。

こうした不平等感が、関東甲信越に対する恨みや憎しみに発展し、やがては国の分断につながり、ひいては、我が国の国会議事堂に暴徒が乱入するのではないかと、危惧しております。

ですので、こうした危険を避けるために、関東甲信越のニュースを、もう明日からでも廃止してください。そうすれば、私はきっと受信料を払うことでしょう……