「人生はゲームみたいだって?」とハチオは聞いた。「じゃあ、ゲームはいいことってこと?」
「いや、そうじゃないんだ。人生にはゲームみたいにステージがあって、生きるってことはそのステージをクリアしていくことなんだ。いや、ただクリアしても意味がないんだ。ステージごとにアイテムがあるだろ。それをちゃんとぜんぶ取っておかないといけないんだ。たとえば20代のステージではそのステージのアイテムをしっかりとっておかなくちゃならない。というのも、20代でアイテムを取り損ねたら、30代になってからはそのアイテムは絶対に取れないから。だって、一度ステージをクリアしてしまったら、後戻りはできないだろ」
「うん。でも、後のステージでもアイテムは出てくるでしょ」
「おじさんも最初そう思ったんだ。自分は人生のステージでなんのアイテムも取ってこなかったけど、50代のステージではせんぶ取ってやるって。だけど、違ったんだ。本当に大事なアイテムはもう出現しないんだ、20代・30代・40代にちゃんとアイテムを取ってクリアしておかないとね」
男はとてもさびしげだった。「だからゲームなんかやめなさい。人生のステージで、いま取れるアイテムをちゃんと取るんだ」
ハチオもなんだか悲しくなって、ゲームをしまった。男はやさしく微笑んだ。ハチオは家に帰る前に、さっきからずっと気になっていたことを尋ねた。
「ねえ、おじさんはさ、どうして話しながら、指で体のあちこちを押したりさすったりしてるの。体の調子が良くないの?」
男はきまり悪そうに答えた。
「いや、あの、もしかしたらね、アイテムぜんぶが手に入る隠しコマンドがないかと思って……くっ、くせみたいな感じ?……」