苦い文学

人権テロリズム

私たち、ホームレスの人権を守る会は、先日、緊急会合を開いた。

いまや、ホームレスは危機的な状況にある — そんな気持ちに突き動かされて、活動家たちが集ったのだ。

長いコロナ禍、ロシアの犯罪的な戦争、恐るべき円安により、我が国の格差はますます広がり、その結果、ホームレスでなかった人々がホームレスとなり、ホームレスであった者はさらに酷い状況に追いやられている。

そして、今、厳しい冬が訪れようとしているのだ。この冬を越せるだろうか? もはや崖っぷちだ。

しかも、恐ろしいことに、日本人のほとんどはホームレスの命など気にしていないのだ。

ホームレスの命を守るため、なんとか社会に訴えなくてはならない。私たちの緊急会合の議題はまさにこれであった。

そして、この議題をめぐって、ある若い活動家が実に大胆不敵な提案をした。欧米の環境活動家の行うエコテロリズムに倣って、私たちも人権テロリズムを行うべきだというのだ。

エコテロリズムとは、名画にスープなどをぶっかけて、環境問題に対する社会の関心を集めようという過激行為だ。

もちろん、これは暴力的な行動でもないし、また名画に致命的な損害をもたらすものでもない。平和的なテロだ。ただ、そのような過激な行為で社会を揺り動かすことを目的としているのだ。

私たちは全会一致で、この非暴力的な人権テロリズムに打って出るべきだと決議した。もはや、私たちにはそれしか残されていなかった。

そして直ちに、私たちは行動プラン作りに没頭した。欧米のやり方をそのまま日本に持ってくるのではなく、日本の状況に合わせて変えるべきところを変えることにしたのだ。

社会的なインパクトはもちろん重要だが、無益な反論を招くのも本意ではない。そのサジ加減がじつに難しかった。私たちの激論は深夜に及び、ついに完璧な人権テロ計画ができ上がった!

私たちは、名画ではなく、日本の名産品たる米を炊き、そこに思いっきり豚汁をぶっかけることにしたのだ。

そして、この人権テロリズムを決行した私たちは、それがいつもの「炊き出し」であることに気がついた。