ビルマ人の夫婦がいた。二人とも難民申請していたが、夫のほうの在留が認められたので、妻のほうは申請を取り下げて配偶者として定住者ビザを取った。
しばらくして、夫が亡くなった。そして、彼女のビザの更新時期が来た。彼女が更新を希望すると、入管から「夫が死亡したにもかかわらず、日本にあなたが在留する理由を書いてください」という通知が来た。
彼女はある程度日本語ができるので、自分で理由書を書き、私にチェックしてほしいといって送ってきた。
日本にしっかりとした生活基盤があることと、定住者ビザから永住者ビザに変更したいということが書かれていた。しかし、私には「難民なので今のビルマには帰れません」ということも書いたほうがよいように思われた。そこで、そう指摘したら、彼女はこう答えた。
「そうすると、特別活動ビザにされてしまうかもしれないから、あえて書かないほうがいい、と他のビルマ人に言われました」
この言葉を理解するには、昨年の夏に出された「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」について知っていなくてはならない。
これは、政情不安から帰国できずにいるビルマ人に在留や就労を認める「特定活動ビザ」を積極的に出すという措置だ。
定住者ビザを持っている彼女にとって、特定活動ビザは「格下の」ビザだ。なので「難民」の理由を加えることで、「緊急避難措置」の対象とされてしまうかもしれないと心配したのである。
私はなるほどそういう考えもあるかと思い、理由書の修正を強くは勧めなかったのだった。
そして、結果が出た。
在留を認めないので帰国しなさい、というものだった。
難民の理由も書いていたら、定住者ビザが出ていたかもしれないし、あるいは、結果は変わらなかったかもしれない。だが、少なくとも特定活動ビザは出ていただろうと、私は推測するのだ。