苦い文学

それな講座

アナウンサーA「これからは関東甲信越のみなさんにお伝えします」

(老人たちが教室で学んでいる映像が流れる)

アナウンサーB「これ、いったい何の様子だと思いますか?」

アナウンサーA「なんでしょう、何か発声練習をしているようですね……」

アナウンサーB「じつは、『それな』を使いこなすための講座なんです!」

アナウンサーA「『それな』というと、あの若者言葉の?」

アナウンサーB「そうなんです。お年寄りたちが若者の会話に加わって楽しく過ごせるようにと、黒骨市が市民団体と協力して始めた取り組みです」

アナウンサーA「へー、素敵ですねえ、私も学んでみたいです!」

(講師が映し出されて、インタビューに答える)

「講座では、現実に近い場面で練習をするので、自信を持って『それな』を使っていただけると思います」

(老人たちが「それなら、それなら」と繰り返している様子が映し出される)

講師「まずは発音に慣れてもらいます。いきなりは難しいですからね」

(受講生の一人、吉田さんがインタビューに答える)

吉田さん「孫娘におじいちゃん古臭いだなんて言われちゃいましてね。ええ、何とか苦労して身につけましたよ。ハハハ、なんだか若返った気分です」

講師「では、その成果を全国に見ていただきましょうか」

(講師は教科書を取り上げ、吉田さんに対して、会話文を読み上げる)

講師「(女子高生の口調で)今日の2限のテスト、めっちゃダルいんだけど」

吉田さん「其れな!」

アナウンサーA「以上、関東甲信越のニュースでした」