歩いていたらたまたま神社を見つけた。赤い大鳥居が立ち、参道の石段が木々の奥へと続いていた。私は神も仏も信じていないので、神社などよっぽどの必要がないかぎり行かないが、古びた感じが気に入ったので立ち寄ることにした。
鳥居をくぐって参道を歩こうとしたときだ、後ろから不意に怒鳴りつけられた。びっくりして振り返ると、中年男が立っていて「無礼者!」と怒っているのだった。
「鳥居をくぐるときは一礼するのが礼儀だろうが!」
私は不愉快だったが、土地の人を尊重したい気持ちもあった。「すいません」と言って、頭を下げた。そのまま歩いていこうとすると男はさらに大声でどやしつけた。
「お前はそれでも日本人か! 鳥居を通るときは真ん中を通るな! 神様の通り道だぞ! 人間は端を歩くのだ。こうだ!」と男は鳥居の右端を通った。「参道だって同じ! 真ん中は神様!」
私はもう我慢ならなくて逆戻りして外に出た。よっぽど鳥居を蹴りつけていってやろうかと思ったが、こらえて真ん中を通るだけにした。
家に帰って、鳥居のくぐり方について、インターネットで調べた。神様の通り道などというバカげた説をいうのもあれば、そんなことを一言もいわないのもあった。どちらともつかないのだ。
いずれにせよ、ああいう手合いは、自分こそが正しいと思いこみ、そうでないものを外道と蔑むのだ。自分だけが鳥居のド真ん中を通っていると思っているのだ。