苦い文学

四季を探しに

世界で唯一四季のある国、ニッポン。今、その四季が危ないのをご存知でしょうか。

(大学教授)「地球温暖化により、今後日本は夏だけになっていくと考えられます」

そんななか、先月、猛暑が続く東京でこんな集会が開かれました。

「吉田くん! ばんざーい!」「がんばれ!」「頼んだぞ!」

熱烈な歓声を浴びるのは、一人の男性。「日本の四季を取り戻す会」のメンバーたちがこの吉田さんの壮行会を開催中です。

会長「ええ、私たちとしても吉田さんのような方を送り出せるのはたいへんうれしい」

(記者:目的はなんでしょうか)会長「私たちが行なっているのは、四季がなくなろうとしているこの日本で、秋冬春を見つけ出し、保護する活動です。吉田さんはこれから日本全国を旅し、各地に残された秋冬春の保護にあたります」

会長が吉田さんに200万円を手渡します。「旅費と四季保護活動費としてまずお渡しします」 吉田さん、感謝とともに受け取ります。「四季の消滅を食い止めるという大任に身の引き締まる思いです。皆さんが集めてくださったこのお金、絶対に無駄にはいたしません」

「吉田さんの保護活動が順調にいけば、早ければこの夏にも都内に秋風が吹くかもしれません」と期待を語る会長さん、しかし、その数週間後……なんと、吉田さんからの連絡が途絶えました。

会長「信じていたのに裏切られた思いです」

会によれば、沖縄のビーチで日光浴していたという目撃情報を最後に、吉田さんの足取りは杳として知れないとのことです。