その少年はじつに心のひん曲がった子で、いつもずるいことばかり考えていた。
どれくらいねじくれていたかというと、サンタクロースの絵を見てこんな悪だくみをするほどだった。
サンタが持ってるあの袋、あやしいぞ。配るプレゼントはそもそもトナカイが引くソリに積んであるじゃないか。しかも、子どもに渡すプレゼントだって、ひとつかふたつ持っていけばいいだけなのだから、あんな大きな袋を抱えて行く必要はない。手で抱えていけば済む話だ。
なのに、あの髭じじいときたら、後生大事に袋を抱えてやがる(あいつめ、まるで車上荒らしを恐れているみたいに、ソリに袋を放置しないのだ!)。あの中にはプレゼントなんか入ってやしない。金目のものが入っているのだ。きっとかなりの額の。
「プレゼントなんかに騙されないぞ」と少年は言った。「俺が欲しいのは、あの袋の中の大金だ」
クリスマス・イブの夜。少年は寝ないでサンタクロースをこっそり待ち続けた。手には鋭く研いだナイフがあった。サンタが来たらそれを突きつけて、あの袋を強奪してやろうという計画だった。
そして、ついにサンタクロースがやってきた。お馴染みの赤い服を着た白髪の老人は、肩に担った袋を片手で掴み、もう片方の手にはプレゼントの箱を抱えていた。彼はよろよろとツリーに近づくと、プレゼントを置こうとかがんだ。
突然明かりがついた。「それまでだ!」 少年の声が響いた。
サンタクロースはゆっくりと振り返り、刃物を握った少年を見つめた。
「その袋を置け!」 少年は言った。「そして、出ていけ! さもないと、お前のその服が血で赤く染まることになるぞ!」
サンタクロースは袋を置くと、そそくさともと来たところから出ていった。しばらくすると、ソリの動く音が聞こえ、鈴の音が空のどこかへと遠ざかっていった。
少年はナイフをしまうと、袋に駆け寄り、その中を見た。
中には、紙切れがたくさん入っていた。どの紙切れにも、乱雑な文字で何か書きつけられている。少年は読んでみた。わがままで生意気な子どもたちへの罵りの言葉や、過剰な配送ノルマへの恨みつらみばかりだった。