苦い文学

汚染人

私たちは長い間、汚染水とともに生きてきました。

汚染水の産湯をつかい、汚染水で割った粉ミルクを飲み、汚染水で煮炊きしたものを食べ、汚染水の海で泳ぎ、汚染水で排泄物を流し、汚染水のスーパー温泉に通い、末期の水まで汚染水、といった具合で、汚染水にどっぷり浸かった暮らしを営んできたのです。

人々は私たちを蔑み、恐れました。憎しみのあまり、いっさい店に入れぬと張り紙した料理屋もございました。迷惑電話もじゃんじゃん鳴り響きました。いつしか人々は私たちを汚染人と呼ぶようになりました。

汚染人!

今までこのような不名誉な呼ばれ方をした人間たちがあるものでしょうか。私たちはがっくりと肩を落とし、この世界のもっとも暗い地点でひっそりと生きていこうと決心したのでございます。

そんなときです。あの方が現れたのは。そのお方は神々しい光をまとい、私たちにこう告げたのです。

「聞きなさい。そして、こうべをあげ、胸を張り、涙を拭いなさい。私はあなたたちが二度と汚染人と呼ばれぬために来たのである。なぜなら、私が来たことにより、この瞬間から先、世界が滅びるまで、汚染水は処理水となったのだから。さあ、行くがよい、処理人よ」

私たちは快哉の叫びを上げました。もはや私たちは汚染人ではない。処理人だ! なんとうれしい知らせでしょうか。

そして、この記念すべき時以来、処理人は世界中に広まり、富み栄えております。