苦い文学

宇宙の鍵

私は宇宙物理学のことはよくわからないが、その研究がある種のパスワード探しであるということはよくわかる。

そのパスワードのうち、もっとも有名なのは、次のものだろう。

𝐸=𝑚𝑐2

これは「質量とエネルギーの等価性」を示す方程式であるが、このパスワードにより、人類の原子力時代の扉が開かれることとなったのである。

だが、宇宙にはもっと巨大で、はるかに開けるのが難しい扉がある。それは、わかりやすくいえば「異次元への扉」だ。この扉が開けば、普通なら光速で何百年もかかるような旅路、人類の力ではとうてい不可能な移動を、瞬間で達成することができるのだ。ある意味では人類の旅の終わりといえるかもしれない。なぜなら、この扉を通れば、どんな距離でも一瞬で飛び越えることができるのだから。

そして、ある日、人類はそのパスワードを見つけることだろう。

「このパスワードによって、異次元への扉が開くのだ」

人類はこのパスワードを用いて、ついに異次元移動マシンを作り上げた。ひとりの男がマシンに乗り込む。カウントダウンとともに、量子エンジンが回転数を上げる。3、2、1、出発!

だが、その瞬間、異次元移動マシンは動きを止めるだろう。扉は開かれなかったのだ。思いもよらない事態にうなだれる人々に、そのとき、不思議なメッセージが届くだろう。

「追加認証のお願い:みずがめ座 91 番星に送った 4 桁の番号を入力してください」

人類はその 4 桁の番号を求めて、150 光年の旅に出発するだろう。