苦い文学

【今日の講話】お盆の物語

今日は、お集まりの皆さんに、お盆にちなんだお話をいたしましょう。

ある裕福な男が夢を見たということです。見ると、亡くなった両親が地獄で苦しんでいます。燃え盛る炎が、二人の体を焼き、食べ物も水も口に近づけるや炎と消えてしまうのでした。

男は駆け寄って助けようとしましたが、見えない壁に隔てられて近づけません。男は絶望して、泣くばかりです。

そのとき、仏様がやってくるのが見えました。男は仏様の足元に身を投げ、苦しんでいる両親を助けるにはどうしたらよいか涙ながらに尋ねました。

「男よ」と仏様は言いました。「目が覚めたら、貧しい人々のために働きなさい。それがお前の両親を救うであろう」

男は朝、起きるや否や、街に出て、貧しい人々に施しをはじめました。飢えた人々には食べ物を与え、家のない人々には住むところを世話し、親のいない子どもには安心して勉強できる場所をつくりました。

そして、善行の一日が終わると、男は再び眠りにつきました。

夢の中で、男は両親が楽しげに暮らしているのを見ました。火炎地獄とうってかわって、そこは穏やかな光に包まれ、涼しく爽やかな風がそよそよと吹いていました。

両親は男を見ると、感謝に手を合わせます。男は言いました。

「お父さま、お母さま、もうすぐお盆でございます。お盆には、亡くなった方々がこの世に戻ってくるとのことです。今年のお盆には、供え物でおもてなしいたしますので、ぜひおいでください」

すると両親は言いました。「いいや、わしらはここにいるよ」

「それはまたどうして」と、驚く男にこう両親は答えました。

「お盆の日本は地獄より暑いからの……」