苦い文学

Z 世代

都内某所に、Z 世代の若者たちが違法の薬物を密かに使用しているアジトがあるという。そんな情報をつかんだ刑事は、地道な捜査の末、ある関係者との接触に成功し、アジトへの行き方を記したメモを手に入れた。潜入捜査を行うべく、50代の刑事は、見事な変装術によって20代の若者になりすました。

刑事は、メモに記された道筋を辿り、とあるマンションのエントランスに入った。それはオートロックのマンションで、インターホンで内部から扉を開けてもらう必要があった。メモにある部屋番号を押し、チャイムを鳴らす。だが、なんの反応もなかった。「怪しい者かどうか、カメラの画像をチェックしているのだ」と考えた刑事は、大胆にもインターホンのカメラに顔を近づけた。自分の変装は見破られない、という絶対的な自信があったのである。すると、不意にスピーカーからざらざらした男の声が聞こえてきた。

「世代は?」

この唐突な質問にも刑事は慌てなかった。なぜならメモにはこうも書かれていたから。

《合言葉:世代を聞かれたら「Z世代」と答えよ》

完璧なまでに若者に扮した刑事は、落ち着いた口調で答えた。

「ゼッド世代」

乱暴にインターホンを切る音が聞こえ、それからは、刑事がいくら番号を押しても、うんともすんともいわなくなった。