どうかみなさん、私の友人を助けてください。彼は今、この山のどこかでひとり怯えながら命を繋いでいるのです。これを一刻を争う状況と言わずしてなんと言いましょうか。
彼はこの 3 月 31 日深夜、ひとりでこの山に向かい、そのまま消息を絶ちました。どうしてそんな無謀なことをしたのかと、不審に思われるかもしれません。それはやむを得ぬことであったのです。純真で真面目な彼は、エイプリルフールに騙されるのはもう絶対にイヤだと、4 月 1 日だけ、人間たちから絶縁しようとしたのです。携帯電話も持たず、一日分だけの装備でこの山に篭ったのでした。
ですが、一日経ち、二日経ち、そして一週間が過ぎ去りました。彼の友人である私たちはいてもたってもいられず、この山を訪れ、捜索を始めました。
はじめはいかなる手がかりもありませんでした。もしや彼は亡くなったのでは、と落胆した私たちでしたが、そのとき、この山の麓の住人の方から思わぬ目撃情報が舞い込んできました。
「最近痩せこけた見知らぬ男が山道を歩いているのを見かけた。近づいて声をかけると逃げてしまった」
彼は生きていたのです! そして、議論の末、私たちはこう結論を出しました。
「彼はエイプリルフールが終わったことをまだ知らないのだ」
その日から私たちは山の中を「エイプリルフールは終了しました。なんの心配も要らぬから、一緒に帰ろう!」と拡声器で呼びかけながら歩き回りました。また「エイプリルフール終了セリ。直チニ下山セヨ」と書いたビラを空から山に撒きました。ああ、ですが、なんということでしょうか。こうした懸命の捜索の結果、昨日、私たちは山奥から「嘘つきー!」と叫ぶ声を耳にしたのでした。
もうこうなったら、私たちの手には負えません。みなさんの力をお借りし、多人数で捜索すれば、きっと彼を救助できるはずです。嘘に満ちた世界とたった一人で戦っている彼をどうか助けてください!