苦い文学

新しい形

おじさんでいることはなんとつらいのだろうか、とおじさんたちは嘆いた。いつ老害あつかいされるか知れたものではないのだ! もうなにをするにもビクビクだ。

おじさんたちは次第に引っ込み思案になり、物陰に隠れるようなった。

そんなときだ、告白者がやってきたのは。その人はいかにも神妙な顔つきでこう告白したのだ。

「もしかしたら僕も……」と眉間に鋭いシワを寄せる。「老害かもしれない……」

人々はこの真摯な告白を称賛した。そして口々に言うのだ。

「いいえ、あなたは老害ではありません!」「そうです。自ら老害と告白する人が老害なもんですか!」

おじさんたちはこの告白に衝撃を受けた。そうなのだ、はじめから告白してしまえばいいのだ。うまい手を思いついたものだ! もうこれで老害呼ばわりとはおさらばだ!

さらにすばらしいのは、この告白は若ければ若いほど効き目があるということだった。

「あんなに若いうちから自分が老害かもしれないと告白する男性が、このさき老害になんて絶対になりっこない! ステキ!」

そんなふうに言われたら、おじさんになることを恐れていたおじさん予備軍が飛びつかないわけがない。

そんなわけで、今、おじさんたちは、30代から80代まで、もうみんなどこにいっても神妙な顔つきで「僕も……老害かもしれない……」と渋めの声で告白している。

少なくとも数週間は、おじさんたちはこれで押し切れるだろう。これが老害の新しい形だとバレるまでは。