ハチオがひとりで公園でゲームをやっていると、変な男がやってきて隣でじっと見ている。「なんで見てるのさ」ってハチオが聞くと「ゲームなんかやっちゃだめだよ」と言ってきた。
「うるさい。おじさんには関係ないだろ」とハチオ。
「おおありさ。おじさんも昔はゲーム好き、いやもうゲーム中毒だったんだ。だからいうのさ。おじさんみたいになっちゃだめだよ」
「おじさんみたいにって?」
「こんなさ」と、男は汚れた服をみせた。「こんなさ」と、男は財布を取り出し中を見せた。500円玉ひとつあるだけだった。「こんなさ」と、男は口を開いた。少ししか歯がなかった。「こんなさ」と男が帽子をとったとき、ハチオはゲームを中断した。
「そうだ。それでいい。おじさんはね、君と同じくらいのころからゲームばかりしてたんだ。10代、20代、30代とゲームに費やして、それでもう満足だった。『これこそゲーマー人生だ』ってね。だけど、40歳を過ぎたとき、ゲームができなくなっちゃったんだ」
「どうして?」
「指が動かなくなっちゃったのさ。それで、ゲーマー人生も終わり。で、普通に生きなくちゃならなくなったんだ。そのとき気がついたんだ。おじさんにはまったくなにもないってことにね。おじさんはゲームの中でアイテムをたくさんとったけど、それは現実のアイテムじゃなかったんだ。それでね、わかったんだ、人生はゲームみたいだ、って」