苦い文学

パワーストーン(1)

夜通し酒を飲み、友人たちと初詣に出かけたら、屋台がいろいろ並んでいた。「お、こりゃなんだ」と酔っ払った友人がそのうちのひとつに目をつけた。それは小さな机だけの店で、「開運! パワーストーン」と書かれた紙が貼ってあった。

覗いてみると、キラキラした石でできた小物が並んでいる。友人は水晶とローズクォーツのブレスレットを指差し、説明書きを読んだ。

「金運・財運のブレスレットか。そしてこっちは」とネックレスを指した。「厄除け・健康・開運をもたらすラピスラズリとタイガーアイの希少品、だとさ」

こうつぶやきながら友人は、この小店の主人をじろじろ見た。くすんだ防寒着に、穴の開いた手袋、毛玉だらけのニット帽のくたびれきった老人で、しきりと鼻を啜り、顔色も悪かった。友人は頭を振りながら主人に尋ねた。

「金運だ開運だなんだいうが、おじいさん、嘘じゃないの? ほんとだったら、こんなところで石売ってるわけなんかないよね」

私はひどく困惑した。友人は酔うといつもこうなのだ。すると店の人はこういった。

「ええ、その通りですね。どうして私が元旦からこんな寒いところでこんな商売をしているかというと」と、彼は裾を捲り、痩せた手首を見せた。そこにはパワーストーン・ブレスレットがいくつも巻きついていた。

「これらが私にもたらしてくれるどんな金運も追っつかないほど浪費してしまうからです。それで、しかたなく、こんなことをしているのです」

「じゃあ、その無駄遣いをやめりゃいいんじゃない」と友人はさらに絡んだ。

「ああ、いまさらそれは無理です。なにしろもう気の遠くなるような長い年月、続けてきたのですから。それに、じっさい、あと少しで完成しそうなのです」

「なにがさ」

「賢者の石です」

友人は一瞬かたまった。