苦い文学

2種の薬

麻薬など別世界のことのように思えるが、しばしばニュースになるのをみると、実際にはかなり広まっているのだろう。

実は私も学生のころ、薬に手を出したことがある。知り合いから「効くよ」と2種の粉末をもらったのだ。

どちらも精神に強く作用する薬だった。ひとつは時間が止まったように感じる薬だ。これはつまり快楽を永続させる効果があるのだ。もうひとつは逆に、時間の経過を早く感じさせる薬。これがあれば退屈な講義や待ち時間などあっという間だ(携帯などなかった時代だ)。

私は初めての経験に胸を高鳴らせながら、2種の薬をカバンの奥に隠して、家路を急いだ。

ところが、こういうときに限って、警官が声をかけてくるのだ。堂々とした態度だったら造作なく切り抜けられたかもしれないが、私はそこまで経験豊かではなかった。私の動揺を見抜いた警官は、カバンの中のブツをすぐに探り当てたのだった。

私は署に連行され、入手経路など厳しく取調べられることとなった。自分の人生もこれで終わりか、と思ったそのとき、警察は私を解放した。私が持っていた粉末にはいかなる麻薬成分も含まれてはいないという報告が上がってきたのだ。

「これはただの土だ」と捜査官は言った。「だが、こんなものに手を出してはいかん。ここから本物の麻薬にハマる人間もいるのだ」

そして、時間を止める薬は、極右政党本部の土地の土だ、と教えてくれた。

「では、時間を早める薬は? 極左ですか?」と私。

「いや」と捜査官はかぶりを振った。「しょっちゅう店が変わるいわくつきの場所の土だ」