政治家の言葉って、まるで歩き出したばかりの幼児みたいだ。
目を離すと、すぐひとり歩きしてどっかに行ってしまう。
そのたびに秘書たちは大騒ぎだ。あっちに行った。いやこっちだ。永田町じゅう探し回ってる。
ぼやぼやしていると、マスコミが捕まえてしまう。そうなったら、もう目も当てられない。下手すると政治家の進退にも発展しかねない。もちろん秘書たちは全員クビだ。だから必死になって探すのだ。
政治家の言葉がひとり歩きする事態があんまり続くので、ついに政府も対策に乗り出した。
今では、政治家の言葉がひとりでどっかに行っちゃっても、秘書は探しになんか行かない。ただ内閣情報調査室に電話するだけだ。
すると、日本じゅうの空にこんな町内放送がスピーカーから流される。
「ピンポンパンポーン……こちらは、内閣総理大臣です。本日、午前10時30分頃の厚生労働大臣の会見のあとから、言葉の行方がわかりません。年齢は3歳、髪は男の子らしく短め、統一感ある服装で、Tシャツには『産む機械』とロゴが入っています。発見されたかたや、お心当たりのあるかたは、内閣情報調査室にまでご連絡ください。ピンポンパンポーン……」