苦い文学

左右盲

裁判官殿、左右盲という言葉をご存知でしょうか。

これは、右と左がどっちかとっさには判断できないことでして、左右失調ともいわれます。

実は、この私も昔から左右が混乱しておりまして、「右手を上げろ」といわれてもすぐにはできないのです。

まず、「箸を持つほう」と自分の手を確認いたします。それから、その手とは逆の手を上げる、ということになります。ええ、つまり、私は左手で箸を持つからでして、この辺りからして、もう混乱しているのです。

しかも、この左右盲、私の知能の他の部分にも広がっているようなのです。

といいますのも、私は左右以外にも、ペアの区別ができないのです。

例えば、同僚に「石山さん」と「石川さん」がいるとしましょう。すると、もう私はどっちの人が「山」で「川」なのかわからなくなってしまいます。

「石山さん」に「石川さん」と呼びかけたり、逆に「石川さん」を「石山さん」としてしまったりするので、もう、最後には名前を呼ぶのを諦めてしまうほどなのです。

ですので、裁判官殿にはぜひご理解いただきたいのですが、ちょうどこれと同じような具合で「善」と「悪」のほうも混乱しておりまして……私としては善のほうに賭けたつもりだったんですが……