科研費とは、日本学術振興会が交付する研究費助成金だ。これは競争的資金で、申請書に研究計画や必要な予算を書いて応募しなくてはならない。応募種目にもよるが、3割弱の採択率だ。
科研費を獲得するためには、よい申請書を書くのが鍵だと言われている。どんなによい研究でも、審査する人に伝わらなければ採択される可能性は低いからだ。
私自身は科研費申請書の書き方について何か知っているわけではないが、聞いた話によれば、小学生にもわかるようにわかりやすく書くことが大事なのだという。
審査する側は、応募された研究課題の専門家ではないことも多いので、小学生にもわかるぐらいに、という気持ちで丁寧に書かねばならない、ということであろう。
また、高度な事柄を小学生にわかるくらいに書く、というのは実際には大変なことだ。それができるということは、その研究を遂行するだけの経験と能力があることの証ともなろう。
あるとき三人の優秀な研究者が、だれの科研費申請書がもっとも優れているかで口論になった。
一人の研究者が言った。
「よい申請書とは小学生にもわかるくらいわかりやすく書かれている、というではないか。ひとつ小学生に読ませて判定してもらうとしよう」
他の二人もこれに同意して、さっそく公園に行って、いかにも利発そうな顔つきの小学生を連れてきた。
一人目の研究者が自分の科研費申請書を小学生に差し出した。
「読んでごらん」
小学生は初めから最後まで読むとこう言った。
「とても興味深い研究ですね。頑張ってください!」
最初の研究者はこれを聞くと満足げに仲間を見た。次に二人目の研究者が自分の申請書を小学生に渡した。
小学生は最後まで目を通すと、目を輝かせて言った。
「読んでとてもワクワクしました! 将来は研究者になって、こんな研究をしたいです!」
二番目の研究者は得意げに仲間を見た。そして三番目の研究者の申請書が小学生に渡された。
小学生はその申請書を読み出したが、途中まで読むと、放り投げ、走り去ってしまった。
二人の研究者は顔を見合わせたが、三番目の研究者は黙っていた。結局、二番目の研究者が勝ちということになった。三人が帰ろうと立ち上がったとき、小学生が大慌てで駆け戻ってきた。
そして三番目の研究者の前に立つと「ぜひこれで研究を進めてください!」と言って、虎の子のお年玉を差し出した。
願わくば、私たちの科研費申請書もかくあらんことを。