苦い文学

緑のリュヌ

未来のある時点で、我々の社会は無尽蔵のエネルギーを手に入れるだろう。世界は繁栄し、科学技術は飛躍的に発展し、人口はこれまでになく増加するだろう。

我々は宇宙に広がりゆく準備ができたのだ。手始めに我々は月の開発に乗り出すだろう。

そのころの我々にとっては、月の重力を制御することも、人類に適した大気を充満させることもさして難しいことではない。

月の環境は激変するだろう。気温は上昇し、穏やかな風が循環し、優しい雨が降り注ぎ、荒野に植物が芽吹くことだろう。やがて、月を豊かな森林が覆いつくすだろう。そして、地球を緑色の月明かりで照らすのだ。

月の住人たちは、月で豊かな暮らしを楽しみ、独自の文化と社会を育むだろう。そのころには月はリュヌと呼ばれるようになるのだ……。

そして、長い年月が経ち、今、リュヌの住人と地球の住人は「どちらが月か」で口汚く罵りあっている。

(ジーン・ウルフ『新しい太陽の書』より)