小説

人物や出来事を中心に展開するフィクションです。

最後の日本語話者

昔、日本人という人たちがいて、日本語という言葉を話していたんだ。けれど、絶滅しちゃった。 それから、何千年もたち、日本人のことなんか、誰もが…

オッパ・チャレンジ(2)

「それならば、なおさら不可能なのでは? オッパなんて無謀なことを諦めて、一緒に上野にサムギョプサルでも食べに行こうよ」と誘うと、彼は不敵に笑…

オッパ・チャレンジ(1)

韓国語の「オッパ」というのは、「お兄さん」という意味だが、日本語と違って、女性が実兄や年上の男性を呼ぶときだけに使われる。男性には別の単語で…

禁酒の霊

今日で酒をやめて 7 年になる。酒は強いほうだったから、平気でずいぶん飲んだ。だが、酔いから立ち直るのに困難を感じる年齢になった。それでやめ…

古書と古着(3)

もしもこれが小説であったならば、翌日、友人がその古着屋を再訪してみると、ショーウィンドウがすっかり模様替えされていたとか、あの稀覯本は影も形…

古書と古着(2)

足を踏み入れた瞬間、店内の空気に常ならぬところがあって、目当てのものに突き進もうとする彼の勢いを削いだ。店の片側にはアンティーク調の棚が並ん…

未来における苦労(3)

鞭で打たれた運搬人は苦悶の叫びをあげた。制服の男は運搬人の腕を乱暴に掴み、荷車の進路の外へと引きずり出した。 「『買える苦労』の搬送は大変な…

未来における苦労(2)

そのとき、若者たちの楽しげな歌声とはまったく異なる物音が私たちの間に入り込んできた。目を向けると、いかにも異様な集団が近づいてくるのが見えた…

未来における苦労(1)

不思議な現象により、遥か未来に送られた私は、自分の時代に戻る方法を探すために、未来の世界をさまよっていた。 私はいくつかの森を越え、ある国に…

宿命

ファクトチェックたちが現れて、あらゆるファクトをチェックした結果、私が生きているというファクトは否定されてしまった。 私はそれは事実と異なる…

思想の季節

ある夏の盛りに、私たちは AI に思想を貸した。そして、いくどめかの春の暖かい風とともに AI が私たちに思想を返しにきた。 その思想は私た…

沈黙

学生のころ私は、自分が賢いと思っていたので、思いついたことを平気でまくしたてたものだった。 ある年上の人と話していて、喪失感についての話題に…

古書と古着(1)

みなさんは、古書マニアというとどんな人を思い浮かべるだろうか。ヨレヨレの服を着た本の虫、そんなイメージではないだろうか。もちろん、これは間違…

老婆の霊

少年のころ、いわゆる心霊スポットというところに肝試しに行ったことがある。そこは、枯れが辻と呼ばれる、鬱蒼とした森に囲まれた不気味な場所だった…