苦い文学

知恵ある言葉

ビートルズの名曲 Let It Be の出だしはこんな感じだ。

When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be

これはたいてい次のように和訳される。


私が困難に直面していると
マザー・メアリーがやってくる
知恵ある言葉を話しながら
「そのままにしなさい」と


私はかねてからこれは誤訳ではないかと思っていた。3つの点を指摘したい。

① words of wisdom と Let it be の関係
多くの人は、マザー・メアリーの話した「知恵の言葉」が「Let it be」であると考える。だが、私はそうではないと思う。「Let it be」は「私」の言葉なのだ。

「いや、『知恵の言葉』すなわち『Let it be』なのだ」と反論する人もいるかもしれない。そう言う人はこうも言うだろう。「『Lovely Rita』すなわち『meter maid』なのと一緒だ」と。

だがこれに関しては、「She’s leaving home」の末尾を聴いてほしい。「home」すなわち「bye-bye」とはならないというのは明らかではないか。これと同じである。

② words of wisdom は、「英知ある言葉」「知恵ある言葉」などと訳されるが、これも誤訳である。そもそもロックというものは、常識に逆らうものなのであるから、これを辞書通りに解釈してはいけない。ここは「小賢しい言葉」、もっと踏み込んで「小言」と読まねばならない。

③ Let it be は通常「ありのままで」「そのままで」などとされるが、これはあくまでもマザー・メアリーの words of wisdom として解釈した場合である。すでに述べたようにこれは「私」の言葉でなくてはならない。とすると「(私を)そのままにしてくれ」、すなわち「ほうっておいてくれ」と読むのがよいだろう。

そこで、以下に記すような正しい訳ができあがる。


俺が厄介なときにかぎって
マザー・メアリーがやってきやがる
やくたいもない小言を喚くのさ
ほうっておいてくれよ

ほうっておいてくれよ じゃまするなって ほうっておいてくれよ このままがいいんだ

ガツンと答えを教えてやるぜ

ほうっておいてくれよ


この歌詞がビートルズ解散の決め手となったのは、間違いないだろう。