保証金受領証書は仮放免のさいに払った保証金の返還手続きに必要なものだが、これを失くした場合、入管で紛失届を出さなくてはならない。そしてそれと同時に、警察署または最寄りの交番へ届け出て、そこで発行される「盗難又は遺失届出証明書」も添える必要がある。
これは失くしたというのが嘘ではないことの証明のようなもので、おそらく、保証金受領証書を持っていない人が勝手にお金を受け取るようなトラブルがあったに違いない。
私が考えるにはこんなトラブルではないか——————
ある人が仮放免許可を受け、保証金30万を自分で収めて仮放免の身となった。保証金受領証書を身元保証人が持っているとしよう。
いっぽう、この仮放免中の人は別の人から借金をしていた。その額は30万円。貸し主は返還を求めていたが、仮放免中の人にはこれはなかなか難しいことだ。
さて、ある期間が経ち、仮放免中の人は日本でのビザを諦めて帰国してしまった。保証金の返還手続きができるのは帰国後なので、彼は身元保証人にこう言う。
「保証金が戻ってきたら、これこれこういうやり方で全額、国に送ってください」
そこで、身元保証人は仕事を休んで品川の入管に手続きに行く。そこで、初めて知るのだ。保証金はすでに返還手続きが終わっていたことを。
貸し主が、身元保証人より先に行って、保証金受領証書とハンコの紛失届や身元保証人の委任状を勝手に提出していたのである(貸し主は公文書を偽造したのだ)。
こういうことが実際にありうるか、というと、私は可能だったと思う。それはともかく、よく考えれば、結局のところ、誰も損してはいないことがわかる。お金は元の場所に帰ったのである。
いや、損をした人は、一人いる。それは身元保証人だ。
帰国者は、いつまでたっても身元保証人が送金してこないので、身元保証人が30万円をネコババしたのではないかと考え、(自分のことを棚に上げて)海の向こうから激しい中傷を始めるのである。