私が身元保証人をしたあるビルマ難民の話だ。
10年以上前のことだが、彼は入管に収容されていて、痔で苦しんでいた。あるとき、あまりの苦痛に便所でキレたらしい(痔のほうではなく)。
そうしたら入管の職員から「仮放免申請したら必ず許可が出るから早くしなさい」と言われたそうだ。
通院が必要とされるようなひどい病気は、しばしば仮放免の理由となる(これは被収容者の健康を考えてというわけではない。入管の中で死なれては困るからだ)。
それで、私のところに仮放免申請のために身元保証人をしてくれないかという話が来たのだった。私は仮放免許可申請を行った。何度申請しても出ないこともあるが、一発で出た。
彼は真面目な人で、私は非常に信頼していた。彼の難民申請の理由も聞いたが、十分に難民性の高いものに思われた。だが、日本政府はそうは思わなかったようだ。いく度目かの申請ののち、彼は諦めて帰国することにした。もう50代になる彼は、戦う気力を失ったのだった。
そして、彼が帰国して4ヶ月ほど経った後、ビルマで軍事クーデターが起きた。
もしあと数ヶ月彼が持ち堪えていたら、その運命は違うものだったろうと思って私はとても残念な気持ちになった。
だが、さらに数ヶ月後、彼が自分の結婚式の写真を送ってきたので、私は考えをやや修正した。