一年ぐらい前から、息苦しさというか、胸の辺りの圧迫感を感じるようになった。血圧が高めなのでそのせいかと思ったら、違うようだ。10日間のチュニジア訪問から帰ると、ますます強く感じるようになった。もしかしたら呼吸器系の病気かもと思って、近くの病院に行った。
初診の受付で
「息苦しいのです」
といったら、どこからともなく看護師が現れて守衛室のようなところに監禁された。コロナを疑われているのだ。検温と問診。10日前にチュニジアから帰国したというと、すぐに追い出された。熱も咳もないし、息苦しさはコロナ以前だったが、問答無用でつまみ出されたのだ。
病院の裏口で途方に暮れてうずくまっていると、ひらひらと紙切れが舞い降りてきた。手に取ってみると、「帰国者は保健所に電話せよ、さまなければ酷い目に遭うぞ」と記されている。
私はただちに電話をかける。
「はい、保健所です」
「えー、帰国者の殺処分はこちらでしょうか」
「は?」
「いえ、帰国者はさっそくこちらに電話せよと言われたもので。病院に行ったのですが、診察してくれなかったので、どうしたらいいかと思ってお電話を差し上げたのです」
「そうですか、でどちらに行ってらしたのですか?」
「チュニジアです」
「チュニジアですか……まことに残念ですがコロナ検査は受けられません」
「いえ、別に検査を受けたいのではないんです。診察を受けたいんです」
「どちら経由ですか」
「ドバイ経由です」
「うーん、中国をかすりもしていませんよ。それでよく検査を受けようだなんて思いましたね!」
「いえ、そうではなくて」
「せめて中国に片足なりとも突っ込んでおられたら違うんですがね……」
いやはやコロナにあらずんば人にあらずだ。
翌週、別の病院に電話して事情を話すと、診察してくれるという。肺のレントゲン、肺機能検査、心電図、心エコー、これらの検査の結果、息苦しさの原因は腹の出過ぎだという診断が下された。
