翌 3 月 23 日の昼、私は N さんの運転する車に乗ってガベスからマトマータに向かった。
マトマータ(マトマタ)は、スターウォーズの撮影地としても有名だ。映画には穴居住宅が出てくるが、これもこの地のベルベル人の伝統的な住居だ。
もっとも、現代のベルベル人は普通の住宅に住んでいる。マトマータのベルベル人でも、昔ながらの家に住んでいるのは、タマズラットの一部の人だけだ、と N さんは言っていた。
マトマータには新と旧の町がある。新マトマータはガベスから車で 30 分のところにあり、その名の通り、新しい町だ。ここには病院や学校、商店があり、もっと不便な村に住むベルベル人たちが移り住んでいる。タマズラットとズラーワの人が多いそうだ。
私たちは、新マトマータを通過し、さらに、穴居住宅風のホテルが点在する旧マトマータを超えて、タマズラットに向かった。
その途中で、N さんが道ばたのコンクリート防壁に腰掛けている老人を見つけた。車を降りて、丁寧に挨拶し、話しかける。
「この日本人がベルベル語を知りたいと言っているんです」
こういうと私を促した。「知りたいことを言って」
私が「『頭』は?」とか「『彼』は?」とか「『ありがとう』は?」とか英語でいくつか尋ねると、N さんがアラビア語で老人に質問する。老人はベルベル語で答えてくれるのだが、私のほうをまったく見ない。まるで私などいないかのようだ。だが、これはこれで我が最初の調査というべきであろう。
(写真:マトマータの風景)