苦い文学

オッパ・チャレンジ(1)

韓国語の「オッパ」というのは、「お兄さん」という意味だが、日本語と違って、女性が実兄や年上の男性を呼ぶときだけに使われる。男性には別の単語で「ヒョン(お兄さん)」がある。ちなみに女性が年上の女性を呼ぶときは「オンニ」、男性が年上の女性を呼ぶときは「ヌナ」という。

「オッパ」は、もっとも有名な韓国語のひとつだ。韓国ドラマでは、年上の恋人への呼びかけに頻出するからだ。ただの親族呼称にすぎないが、ドラマでしか「オッパ」に触れないでいると、そこに必要以上にロマンチックな響きを感じてしまう。

韓ドラ愛好家の私の友人も、この「オッパ」にすっかり心奪われてしまった。50 代半ばの彼は、「自分も韓国の女性にオッパと呼ばれたい」との野望に取り憑かれ、猛勉強の末に韓国語を身につけ、ひとり渡韓したのだった。

「妻子ある身にもかかわらずなんて無茶を」と呆れた私は、出発前にその意図をただした。すると「オッパと呼ばれるためだけに、恋人関係を利用するなどという卑劣な真似はしないから、安心したまえ」と彼は真剣な顔で告げた。