苦い文学

禁酒の霊

今日で酒をやめて 7 年になる。酒は強いほうだったから、平気でずいぶん飲んだ。だが、酔いから立ち直るのに困難を感じる年齢になった。それでやめた。

酒をやめると、いいことが起きる、と人はいう。睡眠の質が向上する、肌がキレイになる、健康になる……私にかぎっていえば、いいことは特になかった。ただ、酔うことがなくなったので、夜の時間が有効に使えるようになった。初めは映画を見たり、本を読んだりしていた。だが、毎晩、何かしら書くことを課すようになってからは、ゆとりはなくなり、ここでも禁酒の効果はなくなった。

禁酒の恩恵を受けることの少ない私であるが、だからといって飲もうという気にはならない。酔うこと自体が不快であるし、そもそも、飲む習慣をなくしてしまった。

ときおり、あのまま飲み続けていたらどうなっているだろうかと考える。何も起きなかったかもしれないが、とっくに死んでいたかもしれない。自分が既にこの世からないかと思うと、不思議な気がする。

夜中、書き物をしていると、ふと誰かの気配に周りを見回すことがある。私には霊感はないが、そんな感覚でしか捉えられない存在に見られている気がする。

心当たりがあるとしたら、酒に飲まれて死んだ私のほかにない。

この霊をやり過ごすにはどうしたらいいだろうか。たぶん酒を飲めば消えるだろう。