そのとき、若者たちの楽しげな歌声とはまったく異なる物音が私たちの間に入り込んできた。目を向けると、いかにも異様な集団が近づいてくるのが見えた。
半裸の男女が巨大な荷車を動かしているのだった。ある者は引っ張り、またある者は後ろから押していた。荷車の上にはドラム缶のような大きな容器が積まれていた。
荷車の脇を、数名の制服姿の男たちが歩き、運搬人たちを口汚く罵っていた。
異様な光景に呆然とする私を、飲み物売りが後ろへ下がらせた
「危険ですよ。近づかないほうがいいのです」
「あれはいったいなにをしているのでしょうか」
「私がお話ししようとしていたのは、これですよ。あの大きな容器のなかには、『買える苦労』が入っているのです」
「『買える苦労』とは?」
「先ほども申し上げましたが、若者たちが若い時に苦労を買ってでもしてしまわないように、ああやって、私たちの国の王様が国中の『買える苦労』を買い集めているのです。そうすれば若者たちも苦労などせず楽しく暮らすことができるというのが、王様のお考えです」
私は甘いジュースを飲みながら、運搬人たちの様子を眺めた。そのとき、ひとりの男がばたりと倒れた。制服姿の男のひとりはそれを見ると、倒れた運搬人のところに駆けつけた。その瞬間、風を切るような鋭い音が聞こえた。男が手にした鞭をふるって、倒れた男の背中を打ったのだった。(つづく)