苦い文学

新しい憲法

私たちの国は、ついに新しい憲法を作り上げた。長く真摯な議論のすえに、自分たちの手で作り上げた本当の憲法が完成したのだ。これは純粋な憲法だ。いかなる条文のいかなる語句をとってみても、外国の干渉は微塵もない。

しかも、実に素晴らしい内容の憲法なのだ。まず、これは究極の平和憲法だ。いかなる武力も放棄しているし、国民に対してはいかなる暴力も禁じられている。人権まわりも完璧だ。人間の自由と理想を完全に保障する世界でもっとも美しい憲法だ。

「ついに完成した!」 私たちはこの憲法に快哉の声を上げ、街に繰り出して祝杯をあげた。

「これは我が国ばかりか、人類史の偉業だ!」 誇らしげな声が国中に響き渡った。

憲法完成を記念する盛大な式典が開催された。為政者たちは、この偉大な憲法が絶対に失われないように、不壊なる媒体に記録し、いかなる改竄も許さぬとばかりに厳重に封印した。

国民の前に立った為政者たちは、万雷の拍手とともに新憲法の公布を高らかに宣言した。その後、厳かに国歌が響き渡るなか、新憲法は頑丈な箱に収められ、国会議事堂の裏の空き地に掘られた穴に埋められた。

私たちはいつか、遠い遠い未来に、このタイムカプセルを開くことだろう。そして、その時、私たちの国がこの憲法にふさわしい国になっていれば、きっと施行されることだろう。