苦い文学

特別な電話

僕たちの国は命を大切にしている。だから、自殺なんてもってのほかだよ。それで、僕たちの国の偉い人々は、死にたくなった人が助けをすぐに求められるように、死にたがり屋のための特別な電話を作ってあげたんだ。

たとえば、自殺したくなった人がいるでしょ。その人は、その特別な電話に電話するんだ。すると、ワンコールも終わらないうちに出てくれるのは、自殺を止めてウン十年という頼もしい専門家だ。おいでなすったとばかりに、自殺を思いとどまらせようと、なだめたりすかしたりさ。それでもう、何人もの自殺を止めたんだ。だから、偉い人たちは、この特別な電話を何台も増設することに決めた。本当にこの国に生まれて誇らしいよ。

でも、この国にはとんでもなくひどい奴らがいて、特別な電話の悪口ばっかり。

「いくら電話を増やしたって、自殺は解決しない!」だってさ。

そりゃ、電話で止められない自殺だってあるよ。でもさ、特別な電話があっても自殺するんじゃ、むしろもう死んで当然じゃない? あきれたね。

それどころか、連中、こんなことまで言い出す始末。

「特別な電話のせいで、逆に自殺が増えてる!」

本当にバカな連中。そんなことありっこないのに。こんな奴らと同じ国にいるかと思うと、そりゃ、誰だって自殺したくもなるさ。