子どもを連れてデパートに行ったら、ガチャガチャのコーナーがあった。三段に積まれたガチャガチャが壁と中央に並べられている。小さなおもちゃが飾られていて、賑やかだ。
何の気なしにそのガチャガチャを覗いて私は驚いた。どれも 500 円なのだ。300 円のもあるが、1,000 円のものまであった。「昔は 100 円玉 1 枚だったのに。これがインフレというものだろうか」と思いながら立ち去ろうとすると、子どもが私の手を引っ張った。ガチャガチャをやりたいというのだ。指し示しているのは、猫のキャラクターのフィギュアで、100 円玉 5 枚と記されている。
「ダメだよ」といっても、子どもは聞かない。私は財布から 100 円玉 1 枚取り出した。「100 円のなら 1 回やっていいよ」 子どもは硬貨を握って、コーナーの奥のほうに走って行った。
100 円だなんてものはもうないかもしれない、と思いながら、私がコーナーの外で待っていると、子どもが駆け戻ってきた。泣きそうな顔で「100 円のがあったんだけど、出てこないよ」という。
「詰まったのかな」と、私は子どもに連れられてガチャガチャの世界に分け入り、問題の機体の前に着いた。回転式のレバーを回そうとして、屈んだ私の目の前に、こんな文句が入ってきた。
「100 円 1 枚で、レバーを 1 回まわせます! (玩具は出てきません)」
これがインフレなのだ。